第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
二学期の終わり、
家庭科の授業でエプロンを縫った。
…実は私、こういうことが苦手。
提出前の授業までに縫い終わらなくて、
家に持ち帰り、母に手伝ってもらいながら
ほぼ、終わらせて学校に持っていった。
『カオリ、エプロン、間に合った?』
『今日は出さない。』
『…なんで?』
『私、どうもモテすぎてるようで。』
『え?』
カオリが取り出したエプロンは
ハサミでジャキジャキに切られていた。
『…これ…どういうこと?』
『さぁ…朝、来たら、こうなってた。
私のことを好きな男子に片想いでも
してる子のヤキモチじゃない?』
『それにしても、あんまりじゃん!
今日、提出なのにどうするの?!』
『今日は忘れたことにして、明日、出す。』
『一晩で作り直すの?!』
『まさか!
去年、隣の中学を卒業した
女バスの先輩に声かけて、
先輩が作ったの、借りて出す。』
『…切り替え、早っ!』
『ここでグズグズ泣くより、犯人探す!
私に惚れてる男と、そいつに惚れてる女!』
『…カオリ、カッコいい!』
『モテすぎるのも、辛いわぁ(笑)』
…なーんて言ってたのだけど。
家庭科の授業で裁縫箱を開けて、
今度は私が驚く番だった。
ぐちゃぐちゃに、されてる。
まち針は全部曲がってるし、
糸は短くバッサリ切られてて、
裁ち鋏は、ベタベタ、
メジャーはこまかくいくつも
きつい結び目が作られてる。
『綾?』
裁縫箱を前に
固まってる私に気付いたカオリが
覗き込んできて息を飲む。
『いつ、やられた?』
『…昨日の昼休みは、普通だった。』
『じゃ、昨日の放課後かぁ。
あたしのエプロンと同じだね。
…てっきり
あたしがモテるからだと思ってたけど、
綾までやられたとなると、
残念ながらモテてるのは私じゃなくて、』
『?』
『悔しーっ。
モテてるのは、ニシノヤかーっ!』
『?!』
『あたしと綾が
ニシノヤと仲良いのが
面白くない人がいるんだよ、きっと。』
『そんな…仲いいって言っても…』
『綾なんか特に、体育大会でおんぶされてるし。』
『えーっ、あれも?!』
『嫉妬は怖いわー!
綾、他になんか、心当たりないの?』
心当たり?