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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)



『…ん?ちょっとニシノヤ!
あたしをおんぶはムリってのは
どーいうことっ?!』

カオリが西谷君の後ろ姿に吠えて、
だけど西谷君にはその声は届かなくて、

『カオリ、整列だよ。』

列に並び、ゆるゆると駆け足で
グラウンドを退場していく。
途中、カオリが小さな声で言った。

『…ね、ドキドキした?』

『…うん。ほかの音、なんにも聞こえなかった。』

『いいなぁ!みんながみてる前で
好きな人の背中に乗るなんてさぁ、
考えただけで、トキメクぅ❤️
夢、憧れっ。あー、羨ましぃ~!!
ヤバ、あたしも早く、新しい恋しよ!
あたしより背が高くて、スポーツマン…』

カオリは完全妄想モード(笑)

…確かに、"夢"みたいだった。
まだドキドキしてる。
多分、時間にしたら10秒とか15秒とか、
そのくらいだったんだと思うけど、

今でもまだ、思い出すだけで
あの気持ちを取り出せる。

覚めない夢、じゃなくて
大切な現実、でよかった。

『カオリ、』

『ん?』

『ありがと。』

『え?あたし、なーんもしてない!
風船選んだのは綾だし、
モテるって立候補してきたのも、
おんぶするって言いだしたのも、
ニシノヤだもーん。なんかさぁ、
もっと、こう、なんつーの、ガツーンと
綾の役に立ちたいんだけどなぁ。
ニシノヤと、くっつけちゃいたい!

ね、体育大会終わったらさ、
思いきって告白とかしてみたらいいのに。
あ、あたし、脚本、書こうか?
思い切り、青春な感じにする?
泣ける感じがいいかな?
記憶喪失、とか。三角関係、とか。
ニシノヤは本当はすごい財閥の息子で
許嫁がいる、許されない恋、とか。』

『それ、現実、無視しすぎ(笑)
あたし、普通がいいよ、普通。』

『あ、じゃ、こういうのは?
シングルマザーになった綾が
たまたまニシノヤに再会して、やっと
二人の恋が始まる、みたいな。』

『何年がかり?!しかも、私を勝手に
シングルマザーにしないでよぉっ(笑)』

…その先も続くカオリの妄想に、
私は笑いっぱなしだった。

恋してることよりも、
それを話題にしながら
こうやって友達と笑いあえることが
すごく楽しかった、中学三年の、秋。


…二人と出会って、二年半。
さよならまで、あと…半年。


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