第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『綾、いくよ!』
いよいよ、私とカオリの番がきた。
バトンを受け取り、走り出す。
『1,2,1,2,いいよ、その感じ!』
最初は二人三脚。
背の小さい私の歩幅にあわせて
カオリが小刻みに足を動かす作戦。
『あ!』
前を走ってた白組のペアが転んで、
私たちが追い抜く。
『今、二位だよ、このまま行こ!』
結んでいた足をほどいて、
大きなネットの海をくぐっていく。
これは小柄な私が先を行きながら
カオリを通してあげて、
その先、
スプーンにのせたゴルフボールを
手を繋いで運ぶ。
スプーンを持つのはカオリ、
落ちたら私がすぐに拾う。
前にいた青組が
落ちたゴルフボールを蹴ってしまい、
ぎゃー、あわあわあわ…と
遠くまで追いかけていくうちに、
私とカオリが追い付いて、追い抜いた。
『よし、今、一位だよ、このまま行こ!』
最後の障害は、風船。
二人の体の間にパンパンの風船を挟んで
手を使わずに割る。
…予行演習の時、
風船が割れるのが怖くて恐々やってたら、
西谷君が
『おらーっ!貧乳コンビの得意分野だろ!』
と叫んで、カオリがキレてたっけ。
あの時のカオリ、マジで怖かった。
貧乳、NGワードなんだね(笑)
『綾、今日は思い切り行くよ、せーのっ!』
もう、恐怖は感じない。
だって、カオリが怒る方が怖いもん(笑)
ギューッッ……パンっ!
案外、簡単に割れた風船の中から
ピラリと紙が1枚、舞い落ちる。
そう、これがこの競技の一番の目玉、
"借り物競争"。
風船の中から出てきた紙に
書いてあるモノやヒトを、
グラウンドの中から探してゴールまで走る。
これが案外、曲者で…
"校長先生"みたいな
見つけやすい指示ならいいけど、
"花柄の靴下"とか
"お医者さん"みたいなのが出ると、
『お医者様、いらっしゃいませんかー?』
とか
『花柄の靴下の方…あっ!
すみません、ちょっと靴下脱いで
貸してください!』
…と、観客席まで行って、
大声で協力を求めなくちゃいけない。
簡単なのが書いてありますように…
私の足元にヒラリと落ちた紙を
素早く拾って開く。
『…』
『何?綾、何て書いてある?』
カオリが、私の手元を覗き込む。