第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『うぅ…眩しい…』
結局、その日は、
絵にかいたような運動会日和になった。
空はどこまでも青くて、
私は相変わらずどんくさい。
そして、
『いけーっ、カオリ~っ!』
『キャーン、カオリセンパ~イ!』
…後輩女子にも人気のカオリは、
確かに、
女の私が見ても惚れ惚れするほど
秋晴れのグラウンドを華麗に駆け回り、
『ニシノヤ先輩っ!』
『いいぞ~、西谷~っ!』
『ニシノヤ~、ニシノヤ~っ!』
西谷君は、男女問わず人気者。
選手としても応援団長としても
誰よりも輝いていた。
『綾、目がハートになってるよ!』
後ろから、ポン、と背中を叩かれる。
リレーから戻ってきたカオリだ。
『カオリ…カオリも西谷君も、かっこよすぎるよ!
なんであんなに速く走れるの?
足、4本あるんじゃないの?』
『バカ、2本しかないって。
しかもニシノヤの2本は、短め(笑)』
『長さの問題じゃないんだ(笑)』
『そうそう…ニシノヤの全ては
野性の本能で動いてるよね!
うん、アイツの人気は動物的。
動物園のチーターとか、
競馬場の馬、みたいな。』
『やっぱ、4本足じゃん(笑)』
テントの前を見ると、
2年男子の徒競走をひと組ひと組
大声で応援してる西谷君。
赤い大きな旗を振りながら、
自分まで走り出しそうな勢いで。
『でもやっぱり、
西谷君に応援してもらったら、
なんか、すごく頑張れる気がする。』
『綾が出るの、あと何?』
『カオリと組む、学年競技だけだよ。
200m走は安定のビリだったし、
ダンスも終わったし。今年も相変わらず
どれもどんくさい結果だった…』
自己嫌悪。
せっかく、西谷君が応援団長なのにな。
『よーし、学年競技に賭けよう!』
『カオリの足、ひっぱらないように努力はするね…』
『何、弱々しいこと言ってんの!
私と組むんだもん、ぶっちぎるよ!』
『置いてかれないように、頑張る…』
西谷君に見てほしい、なんて、
そんな大それたこと、思わない。
それより何より、無様な格好を
西谷君に見られないように…
目立たないように、
無事にゴールを目指すのが
私の中学最後の運動会、
残り1競技の精一杯の目標。
…だったのに。