第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
文化祭の後のビッグイベントといえば、
…西谷君のための舞台、とも言える日、
そう、体育大会。
私達のクラスは赤組で、
西谷君は、立候補+満場一致で
赤組の応援団長になった。
…小学校の頃から思ってた。
体育大会の日に輝ける人が、羨ましい。
どんなに日頃、目立たなくても、
どんなに日頃、居眠りばかりしてても、
どんなに日頃、成績が悪くても、
体育大会の日に活躍できる人は
それだけで存在感が際立つ。
みんなの声援を全身で受けて、
歯をくいしばって走る姿、
跳んだり投げたりする姿、
誇らしげにゴールする姿は
男子も女子もみんな、かっこよく見える。
西谷君もカオリも、そのタイプ。
体育大会が終わると急にモテだす(笑)
…私は、その逆。
全力で走ってるつもりなのに、
私だけ、スローモーションみたいに
ゆっくりしか動けない。
ダンスだって、
自分の体なのに思い通りに動かないし。
…いや、ホントはわかってる、
誰も私なんか見てないんだってこと。
だけど、ほとんど、トラウマ。
『雨、降ればいいのになぁ。』
そればっかり言う私に、
カオリはガツンと言った。
『何、言ってんの!
今年はニシノヤが応援団長なんだから!
競技優勝も応援優勝も両方、狙うよ!
綾も、なんか思い出、作んなくちゃ!』
『…体育大会の日の西谷君と私なんて、
別の星に生きてるくらい、接点ないし。』
『ダメダメ!
知らないの?あぁ見えて、ニシノヤ、
体育大会の後、モテちゃうよ?
ハチマキとかもらいたいって狙ってる後輩とか
結構、いるんだよ?』
『えぇ、どーぞどーぞ。
グラウンドが似合う人達同士で
思い切り青春して下さいっ。
…私は、もうモグラみたいに、地味に…』
『いやいや、マンガだと、
派手に転んだどんくさい女の子に、
学年のヒーローが手を差し伸べて
そこから恋が始まるじゃん!』
『…どんくさくて悪かったですねっ。
しかも、それ、マンガだし。
現実にはそんなこと、有り得ないから。
あぁ、雨、降らないかなぁ…』
『そんなこと言うけどさ、
ちょっと見てみたいでしょ?
学ランに長ハチマキ姿のニシノヤ。』
…うぐ。
ちょっとじゃなくてすごく見てみたい。
きっとすごく、輝いてる。
…だからこそ、
逆にどんくさい私を
見られたくないんだよぉ(涙)…