第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『二学期ってー、
恋する女子にとって最高の季節だからっ!』
カオリは私にそう宣言して、
まるで自分のことのように楽しそうに
私の片想いの思い出作りに
張り切ってくれてる。
『中学最後の文化祭っ!』
うちのクラスのリーダーはもちろん、
盛り上げ上手なカオリと西谷君。
カオリにかりだされるままに、
私も一緒にクラス展示の準備や
合唱コンクールの練習に参加し、
昼休みも放課後もほとんど毎日、
カオリと西谷君と一緒に過ごした。
考えるのは、カオリ。
みんなをまとめたり、
先生に交渉するのも、カオリ。
それを裏方で地道に実践するのが、私。
西谷君は…
西谷君は、まさに"盛り上げ係"
誰かが行き詰まった時や
皆が疲れてきた時、
西谷君が、明るく、時には熱く
みんなを鼓舞してくれる。
"心配すんな、このクラスには俺がいるぜっ!"
"大丈夫だっ、うちのクラスは
本番に強いタイプだからなっ!"
"一致団結、自信満々、絶対成功!"
クラスの真ん中で西谷君がそう叫ぶと、
不思議とみんな、笑いながら
『西谷~、口ばっか動かしてないで手伝えや~!』
『西谷君、元気あるけど根拠ないっ!』
なんて言いながらも
『もうちょっと、頑張ろう!』
…って、つい、前向きになってしまう。
そして、
裏方仕事をする私にも
"森島、字、うめぇなぁ!"
"森島、手先が器用だな!"
そうやって声をかけてくれるのが
すごく嬉しくて、
どんどん頑張りたくなって、
カオリや西谷君と一緒にいると、
クラスの他の人…男女関係なく…とも
しゃべる機会が増えてきて、
そのうちどんどん、
クラスの人とも仲良くなれて、
今までの学校行事の中で、
一番、一生懸命取り組んだ気がする。
そして、
クラス対抗合唱コンクールでは準優勝、
クラス展示の人気投票では見事、優勝。
結果発表の時は、嬉しくて、
クラスみんなで抱き合って喜んで、
…西谷君とも、ハイタッチした。
1秒にもならない一瞬だったのに。
私だけじゃなくてみんなそうしてるのに。
別に、
大きな手、とか
あったかい手、とか
そんな特別な感じも全然なくて、
手のひら同士が
パチンと音をたてただけなのに、
賞状より、トロフィーより、嬉しかった。