第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
そして中学校も最後の一年。
嬉しいことに、
私達三人は、また同じクラスになった。
中3は、忙しい。
部活は、夏にむけて総仕上げ。
私のいる吹奏楽部は、
夏のコンクールで銀賞。
…例年どおりの結果だ(笑)
カオリがキャプテンをつとめる
女子バスケは、地区大会で準優勝。
私も応援に行った県大会では
残念ながら2回戦敗退だった。
負けず嫌いのカオリ。
試合会場では、
泣いてる仲間にカツを入れてたけど、
帰り道、
私の顔を見た途端、悔し泣き。
そして二人でカラオケに行った。
"失恋したとき、思い出す~"なんて
あの恋はすっかり、笑い話になってた。
そして、西谷君達男子バレー部。
…カオリ達が負けた翌日の最終日が
西谷君達の最終戦の日で。
『え?綾、ニシノヤの試合、
見たことないの?えぇっ、なんで!?』
『…だって、私、部外者だし…』
『部外者じゃないよー、
同じ学校で同じクラスじゃん!』
『そうだけど…』
『"好き"を認めちゃいそうなんでしょ。』
『…』
『バッカ!考えすぎっ(笑)
いやいや、絶対、見た方がいいって。
教室にいるときとは別人だから!
私が言うのもなんだけど、
バレーしてる時のニシノヤは、スゴいよ!』
そういうカオリに無理矢理誘われて、
試合を見に行った。
ちゃんとした試合の西谷君を見るのは
実は、これが初めてだった。
あんなに真剣で。
あんなに軽やかで。
あんなに全力で。
あんなに力強くて。
あんなに自信に満ち溢れてて
あんなに本気で喜んだり悔しがったり。
…一瞬一瞬、
目が離せなかった。
西谷君にだけ
スポットライトが当たってるみたいに
そこだけ明るく見えて、
聞こえるはずないのに、
西谷君の声だけ、
ここまで聞こえてる気がした。
…あれ、この感覚…
『どう?ニシノヤ。』
『…カオリ、今、やっとわかった。』
『え?なに?』
『カオリが、まさき君を見つけた日の気持ち。』
カオリが、笑う。
『ニシノヤだけ明るく見える?』
『うん。私の目がおかしいみたい。』
『ドキドキする?』
『…うん。
学校で、心配して見てるときの
あのドキドキとは、違うドキドキ…』
『来たか。』
『来ちゃったかもしんない…』
恋を、認める、瞬間。