第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『私が言ってあげようか?
綾とつきあってみたら、って。
昨日のお礼にさぁ、手伝うよ。
ニシノヤと綾がうまくいったら、
私、チョー嬉しいんだけど。』
『や、やめて!』
『なんでぇ?ニシノヤはね、
バレーのことしか考えてないから。
ちゃんと言わなきゃわかんないよ?
綾から好きだって言ったら、
少しは意識するんじゃないかな?』
『い、意識しないでほしい!』
『なんでよ~。仲、いいじゃん。』
『仲いいっていうのは、
カオリと西谷君みたいなことを
言うんだよ。私は、友達、友達。
そんで、友達で、充分。』
『そう?彼氏、欲しくない?』
『…告白して、終わりが来るより、
今のままでカオリと3人、仲良く
いられる方がいいの!
だから、お願い。絶対、言わないで。
…そもそも、好きかどうか、
自分でもよくわからないんだし。』
『…ふーん。私だったらダメモトでも
ぶつかりたいけどなぁ。ま、いいや。
それは綾が決めることだもんね。
でも、もしこれから気持ちが変わって
ニシノヤに告白したくなった時は、
私も手伝うから!』
『…ありがと。ね、カオリ、
いっこだけ、聞いていい?』
『なに?』
『まさき君に待たされても
あんなに嬉しそうな顔してたの、なんで?
西谷君とかが遅れると、
カオリ、すっごく怒るのに。』
『…なんでだろうねぇ。
待ってる間は、確かにイライラしたり
不安になったりしてたんだよ。
でも、"お待たせっ☆"ってあの笑顔で
来られると、全部許せちゃったんだよね。
一目惚れの弱さっていうか…不思議。』
理屈では説明できないのが
恋だとしたら、
私が西谷君のあれこれが
気になってしょうがないのも
恋、なのかもしれないね。
…と、口には出さなかったけど、
思ったりした、中学二年の冬の始まり。
まだまだ、
一歩を踏み出す勇気も、
恋を認める勇気も、なかった。
休み時間の元気いっぱいの西谷君を、
テスト前に私を頼ってくる西谷君を、
カオリと3人の時のヤンチャな西谷君を、
体育祭や文化祭でヒトキワ目立つ西谷君を、
部活の時だけはすごく真剣な西谷君を、
見ているだけで、嬉しかった。