第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『…んぁぁっ、ぐるじぃ…』
『…ゲホッ、ぼんど、ぐるじぃで…』
しばらーく泣いてたら、なんだか
ものすごく鼻が詰まってきて、
息が出来ないくらい苦しくなって、
『…ふふ…綾、ひっどい顔!
失恋したの、綾みたい!』
『カオリだって、目、こすりすぎ!
まつげ、ベッタベタになってる。』
…ふふふ…あ、はは…ハハハハ!
『復活したか?』
西谷君の声。
背中を向けたままでいるのは、
きっと、照れと優しさ、かな。
カオリと目があう。
『大丈夫?』
『あたしは大丈夫。カオリは?』
『うん、もう、泣くのはいいかな。』
『…行こうか。』
『行こうっ…ニシノヤ~っ!』
カオリが走って行って、
西谷君の背中をバチンと叩いた。
『痛ぇ~っっっ!』
『見なかったことにことにしてよ!』
『何を?』
『全部っ。肉まんも、泣いたのも。』
…3人並んで歩き始める。
『いや、忘れらんねーよっ。
まさかの落ちた肉まん食らわせ攻撃。
カオリ、絶対、手ぇ出すと思ったのに。
斬新で笑えた~。あん時のアイツの顔!』
『うんうん、私も見ててスカッとした!』
『なんかさぁ、あんなイチャつく姿、
目の前で見た時はカーッとなったけど、
…自分も悪かったな、って思って。
見た目だけで勝手に好きになったから。
でも、
はたから見たら、ただのチャラ男だね。
肉まんくわえた顔見たら、醒めた。』
『そうそう!
アイツは男から見てもチャラい。
早く気付いてよかった、ってことでっ。』
『あーぁ、終わっちゃった、私の初恋愛。』
『…よし、カラオケ、行こうぜ!
こういう時はパーっとやらねぇと。
カオリ、アレ歌え、ほらなんだっけ、
♪悪い男だと知ってても~♪みたいな。
今のカオリにピッタリだって。』
『…選曲、ムカつくけど(笑)
綾は?時間、大丈夫?』
『うん。』
『あ、でもニシノヤは、
テスト勉強しなくて大丈夫なの?』
『…そういうこと、今、言うなよぉ。
お前のために俺の貴重な勉強時間を…』
『なるほど。
勉強したくない言い訳にカラオケ?!』
『んなことあるかっ!
テストは次があるけど、
カオリの失恋記念は今しかないだろ!』
『記念って言わないっ(怒)』