第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『…もしかして、ニシノヤもいるの?』
『うん、さっきまでそこに…』
私がキョロキョロと見回すと、
カオリが声をあげた。
『ニシノヤーっ、どこっ?』
目の前の自動販売機の陰から
居心地悪そうに出てきた西谷君。
『なんで隠れてんのよ?』
不機嫌そうに答える。
『俺がいたら、お前、泣けねぇだろ?』
…西谷君…
『…もぅっ…なんでそんな気、使うのよぉ!
我慢してたのに、泣きたくなるじゃん!』
『…待て!ここで泣くな!
アイツに見られたら、カオリの男気、台無しだぞ!』
『ちょっと!男気じゃないしっ!!
あたし、女子!女心ですぅっ!』
『あぁ、もう、うるせぇなぁ、
はいはい、女子のお二人、こっち。』
手招きされて
カオリと二人で行ってみると、
西谷君が隠れてた自動販売機の向こう、
お店とお店の間の細い裏道の先は
行き止まり。
そこに私達二人を押し込んで。
『俺、通るヤツラから見えないように
ここで見張ってっから、
森島、カオリのこと、頼む。』
プイッと背中を向けると、
鼻唄を歌い始めた西谷君。
私達の姿が見えないように。
カオリの泣き声が聞こえないように。
『ニシノヤのばーか。
あんなちっちゃい背中じゃ、
隠せるわけ、ないじゃんっ!』
…口ではそう言いながら、
カオリは、安心したように、
私にしがみついて泣き始めた。
あんなに恋してHAPPYだったのに、
裏切りを目の前で見て、悔しかったね。
だけどホントにカッコよかった。
私じゃとてもあんなこと出来ない。
恋してるカオリを見てると
私だって楽しかったんだから。
ちゃんと自分で吹っ切ったカオリのこと、
私、ますます好きになったよ。
…言いたいことはいっぱいあるのに
どれも言葉に出来なくて、
泣いてるカオリを見てたら
私まで胸が痛くなって、
『…カオリ~っ(泣)…』
『…ッ、もうっ、
なんで綾まで泣くの~っ!(涙)』
『…ふぇっ、んぇっ、だってぇ~(爆泣)』
泣いてる私達を、西谷君はずっと
知らんぷりしながら隠しててくれた。
カオリは
"ちっちゃい背中"だって言ってたけど、
私の目には、
すごくおっきくて頼もしく、見えた。
…そんなこと、言えなかったけど。