第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
ムシャムシャ。
綾ちゃんの残した
だし巻き玉子のはしっこを
うまそうに食べながら。
『うん、なんか久しぶりに
女にドキドキしてる。
追っかける恋って、楽しいな!』
『…そーなんだ。』
『オイカワもさ、最初の印象ほど
綾ちゃんのこと、苦手じゃないだろ?』
『まぁね。思ってたほど
クール女子じゃないみたいだし』
木兎が、ニヤリ。
『でも、声かけたの、俺が先だからっ。』
『わかってる。心配しなくても俺は、』
『真面目な恋愛は遠慮する~、だろ?』
『そうそう。』
『心配症だなぁ。絶好調の俺と組めば、
二人で日本代表、間違いなしだって!
オイカワも今を楽しめばいいのにっ!』
…そうだといいけど。
前を譲らない現役選手。
しのぎを削る、同世代。
後ろから迫ってくる後輩。
考えると、胸がざわつく。
今の木兎を動かすのは、
綾ちゃんの存在。
今の俺を動かすのは、
焦燥感と負けん気だ。
それぞれのモチベーションで
自分を高めていくしかない。
『コタローちゃん、帰ろ。
明日、綾ちゃんが応援に来なくても、
今日みたいにキメてよ!?
じゃないともう、協力しないから。』
『当ったり前じゃん、心配すんなって!』
夜道を歩きながら
機嫌よく鼻唄を歌う木兎。
♪恋をしたのあ、な、たのぉ~♪
例の歌を
気持ち良さそうに歌いながら、
クネクネと、指と腰を動かして。
『コタローちゃん、
声、大きい!動きが不審!
怪しく目立ってるよっ!』
『え?俺、目立ってる?イェ~イ!』
どこまでも、HAPPYな木兎。
この規格外の人柄に
綾ちゃんは、
ついていけるんだろうか?
…その時、不吉なうめき声。
『ンンっ…グエッ…オイカワ、吐く…』
『ええっ( ; ゜Д゜)
酔ってんのに、変な動きするからだよ!
今、ここで?それはマズイ、ちょ、
そこのコンビニのトイレまで我慢して!』
『…ゥプ…すっぱいの、きた…』
『だーめだって、我慢してっ!』
…綾ちゃん、
こんなヤツだけど、友達、やれる?
こんなヤツだけど、いいヤツなんだ。
こんなヤツだから、目が離せなくて。
こんなヤツだから、裏切れないんだ。
…いろんな意味で、勝てない。
だから木兎とは
敵にするより、味方でいたい。