第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
坂道の上からは
どんどん同じ制服の生徒が歩いてくる。
真っ直ぐ駅に向かう人もいれば
カオリのいるコンビニに入る人も。
ダラダラ歩いてる人も、
走ってる人も、自転車の人も。
人波の流れが複雑で、目が回りそう…
『生徒、多くね?!』
『中高一貫だから…高校生もいるもんね。』
『森島、アイツ、見つけられっか?』
『…ちょっと、ムリな気がする…』
『この人混みじゃ、乱闘もなぁ…。
な、カオリにさ、
今日の復讐は諦めた方がいいって
言ってやった方がいいんじゃねーか?』
『もうっ、西谷君、
さっきも言ったけど、乱闘とかダメだって!
カオリだってきっとそんなつもりじゃ…』
そう言いながらコンビニの方をみたら、
ちょうどその瞬間、カオリの顔から
表情が、消えたのがわかった。
…持ってた雑誌で顔をサッと隠してる。
『…森島、アレ、』
『うん、西谷君、どうしよう…』
カオリの目線の先に、いた。
人波の中、
手を繋いでイチャイチャと歩く、
"まさき君"と彼女が、
コンビニに入っていく。
カオリの存在には、
まだ、気付いてないみたい。
だからこそ、遠慮なくイチャイチャと、
あ、今、
カオリの真後ろに立ち止まって
リップクリーム、選んでる。
『…なんか、ベタベタなこと、
言ってそうじゃねーか?』
『ベタベタ?』
『"女子の唇はガサガサじゃダメだぞっ、
いつもプルプルさせとけよ"みたいな。』
『…西谷君、そういうこと考えるんだ。
なんかちょっと、意外…』
『ち、違うって!
あぁいうチャラ男が言いそうだって話!
お、俺は、く、唇なんか、
ガサガサでもプルプルでも、
別にどっちでも…いや、やっぱプルプ…』
思わず、自分の唇を触ってしまう。
私の唇…ガサガサじゃないけど、
プルプルってほどでもないなぁ…
今度、保湿リップ、買おう。
…いや、私のことはどーでもよくて。
『…あ!』
肉まんを1つ手にして、
コンビニを出ていく二人。
カオリは雑誌を棚に戻し、
グッ、と口を真一文字に結んで、
二人の後を追ってコンビニを出た。
『…どーするつもりだ?』
『わかんない…とりあえず、行く?』
『…だな。』
そう思ってるのに、
私達二人、どちらも1歩も動けなくて。