第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
体育大会だって
こんなに走ったことはない、
…というくらい必死で走って、駅に着く。
『…ハァ、ハァ…い、る?…』
『あっ、あそこだ!』
カオリは、一人でホームに立っていた。
見たことないような、思い詰めた顔。
『…こういう時、どーしたらいいんだ?』
『わかんない…声、かけてみる?』
『なんて?』
『あれ~、偶然だね~、とか?』
『…』
『違う、よねぇ…』
ここまで来たのはいいけど、
まったくどうしていいかわからない。
そのくらい、
私たちの知らない表情のカオリ。
『カオリ、怖い顔してんなぁ。』
『彼に会いに行くのかな?』
『だろー。』
『会って、どうするんだろ?』
『さぁ…あいつ、怒ると狂暴だから。
殴るか蹴るかするつもりじゃねぇの?』
『えーっ?!
そうなったら、西谷君、止めてよ?!』
『なんで?!俺も一発ぐらいぶん殴るっ!』
『やめてやめてやめて~!暴力禁止!』
恋愛未経験者の私(達)が
こうして追いかけてきたって
ホントに何の役にも立たないんだけど…
『ぁ、電車、乗ったぞ!』
『あたしたちも…』
…隣の車両にのって、
まさき君の学校の最寄り駅で降りる。
まるで尾行でもするように
カオリの後ろをついていった。
私は初めてここに来たから
カオリの背中を
見失わないので精一杯だけど、
カオリは迷うことなく歩く。
きっと、ここに何度も来たことあるんだ。
まさき君を見るために。
まさき君とデートするために。
…楽しい思い出がいっぱいの場所を
今、どんな気持ちで歩いてるんだろ。
想像しただけで、私が泣いちゃいそうだ。
学校から続く坂道には
駅に向かう制服の波が続々と。
ここもきっとテスト前なんだな。
だからみんな部活もないんだろうし、
あの二人も昨日、図書館に来たんだろう。
『…ぉ、』
…前を歩いてたカオリが、
立ち止まって、コンビニに入った。
雑誌を開いて立ち読みするフリしながら
通りを見てる。
チラチラ、じゃない。ガン見。
『西谷君、そっち、曲がろ。』
通りの向かい、コンビニが見える角。
…ホントに尾行中の刑事さんみたい…
『…あいつ、約束してんのかな?』
『さぁ…』
何にもわからない。
けど、思う。
カオリ、頑張れ!