第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
翌日。月曜日。
『綾おはよ!』
『あ、カオリ、おはよう。大丈夫?
眠れた?泣いた?』
『もう、やだなぁ!
"失恋確定"みたいに言うの、やめて~!
私、まだ諦めてませ~ん(笑)』
『ごめんごめん(笑)
あ、そうだ、ねぇ、
今日から部活、テスト前休みだし、
放課後、また一緒に勉強しない?』
『あぁ、残念!今日はムリ!
でも、明日はやりたいな。
社会の問題出しあい、しようよ。』
『いいよ。じゃあ西谷君の数学は
今日うちに終わらせとくね。』
『終わればいいけど(笑)』
いつもと変わらない感じなのは、
本当に大丈夫だから?
それとも、カラ元気?
どっちなのか、その日のカオリからは
わからないくらい、普通だった。
気にならないわけじゃない。
でも、私から昨日のことを言い出すのも
どうかと思って、私も、フツーに過ごして、
『じゃあね、綾、明日!』
帰りの会が終わるとすぐに、
カオリはピラピラと手を振って
いつものように教室を出ていく。
『…さてと。西谷君呼びに行…』
そう考えていたら、
教室の中に西谷君が飛び込んできた。
『おい、森島!』
『あれ、西谷君!今、呼びに…』
『今日、カオリは?』
『誘ったけど先約アリだって。
明日、社会やろうって約束したから、
数学は今日、やっちゃおう。』
『さっき、目の前通ったから
俺も声、かけたんだけどさ、
なんか、全然、俺に気づかない感じ?
えらく深刻な顔で出てったんだよ。』
『え?』
深刻な顔?
ほんの数分前、私に手を振った時は
いつもと変わらない表情だったのに。
『…どこ行ったんだろ?』
『気になるな。』
『気になるね。』
…もう、テスト勉強どころじゃない。
『…間に合うかな?』
『とにかく、駅、だ!』
鞄に荷物を突っ込んで
全速力で校門を抜け、駅に向かう。
…途中、私が息切れして立ち止まると、
前を走る西谷君が私の所まで戻ってきて、
私の背中をドンドン叩きながら
『もちっとだ、頑張れ!』って
声をかけてくれた。
ちょっと力が強すぎて痛かったけど、
嬉しかった。
…カオリ、西谷君のこと、
好きになればよかったのに。
西谷君は、優しいよ。
彼女を裏切ったりしないよ。
…二人なら、お似合いだってば。