第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『ね、お願い。』
カオリが両手を合わせる。
『二人が今日、見たこと、
一旦、忘れてくれないかな?』
『ぁ?』『え?』
…一旦、忘れる、って?
『だって私は、
まさき君のそんな姿、見てないから。
二人で勝手にまさき君を判断しないで。
…ちゃんと、自分で、確かめる。』
友達になったこの1年半の間に見た中で
1番、女の子らしいカオリ。
…恋をすると、こんな風になるんだね。
カオリが、かわいくて。
そんで、
恋してることかちょっと羨ましくて。
だけど、
男子の…最強のトモダチの…目には
そんな風には見えないみたい。
『…自分で確かめる、っつっても、
お前、ちゃんと言えるのかよ?
そんなに好きなのに、言えるのかよ?』
『…ニシノヤ、うるさい。』
『なにっ?!心配してやってんだろ!』
どっちの気持ちもわかるから、
私はどっちの味方もしてあげたくて。
『西谷君、ちょっと待って。
…カオリ、1個だけ約束してくれる?』
『…なに?』
『確かめたらさ、どうなったか、
私と西谷君にも、ちゃんと教えて。
…ここまで知っちゃったからには、
あたしたちだって、気になるもん。』
『…わかった。約束する。』
それでもまだ噛みつく西谷君。
『…見なかったことにして
シレッと付き合うんじゃねーぞ?
まず確認してから、ちゃんと…』
『西谷君、大丈夫だよ。
…カオリは、ちゃんとするよ。』
何の根拠もないけど、
そう言いたくなる。
こんなに辛い状況なのに、
やっぱり彼を信じたい、という
カオリの女の子らしい気持ちを
傷付けたくないもん。
ドキドキもキュンも
不安も悲しみも切なさも
…その全部が"恋"で、
"恋"がカオリを女の子にしてるんだね。
その日カオリは、送る、という西谷君を、
"男子と二人で歩かない"と頑なに断った。
同じ電車で同じ駅まで帰るのに、
『私は、まさき君を裏切らない!』って。
『されてイヤなことは、しない!』って。
最後、半ギレ気味の西谷君は、
もう、優しさではなく意地で(笑)
隣の車両に乗って、少し離れた所を歩いて
カオリの家まで送っていった。
『俺、ストーカーみたいじゃねえか!』
ってブツブツ文句言いながらも、
ちゃーんとついていくのがおかしかった。