第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
駅の近くの公園。
まだ6時前だというのに
どんどん日が暮れてきて、
しかも今日は風が冷たい。
もう遊んでる子もいなくて、
ブランコが風でキィキィ音をたてながら
微かに揺れてる。
…今の私たちの状況にピッタリの、
ひんやりしたシチュエーションだなぁ…
そんなことを思いながら、
カオリを挟んで3人でベンチに座った。
カオリはなんにも言わなくて、
西谷君は、かかとで地面を蹴りながら
私の方をチラチラ見てる。
…私が話すしかないのはわかってる。
でも、どこからどこまで話すべき?
必要ないことまで言ってしまったら
ますますカオリを傷付けそうで。
『ええと、何から話したら…』
『知ってること、全部。』
カオリの声は、
怒ってるのか悲しいのかわからないけど
とっても低くて力のない声で。
…もう、
この状況で隠し事はできない。
そう思ったから、
最初から全部、話すことにした。
『…おととい、塾でね、』
金曜日に、塾で、
"高橋先輩に告白してOKもらった"と
言ってた子がいたこと。
昨日、一人で買い物に行った時に、
まちぼうけのカオリを見たこと。
それを西谷君に相談したら
"そんなに好きってスゴい"
…ってことになって
私たちは口出ししないことにしたこと。
今日、さっき、図書館で
ふたりを見たこと。
…全然、上手にまとまらなくて、
何度も話が戻ったりもつれたりしたけど
それでも、
1つもごまかすことなく、全部、話した。
ちょっとの間、シーンとして、
でももう、話すこともなくて、
だけど沈黙に耐えられなくて、
『ごめんね。』
と私が謝ったら、カオリは顔をあげて、
『なんで綾が謝んの?』
『だって…
友達なのに、なんの役にも立たないし、
勝手に西谷君に相談しちゃったし…』
カオリは悔しそうな顔で
足をジタバタさせて言った。
『あーん、もうっ、ホントにっ!
なんでニシノヤに相談するかなぁっ!
ニシノヤにだけは、
弱味、握られたくなかったぁっ!』
『なんだとー?!
こう見えて、俺なりに心配したって!』
『あんたの前ではいつも、
カンペキな幼なじみでいたかったっ!』
『はぁっ?!どこがカンペキだ?!』
…いつもの二人のやりとりが、
その場の空気を少し、ゆるめてくれる。