第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
本棚の向こう側を歩くカップル。
見覚えがある。
…女の子は、私と同じ塾の、
あの『高橋先輩に告ってOKだった!』
と言ってた子。
背の高い男の子は、
何度となくカオリに
写メで見せてもらった"まさき君"に、
間違いない。
二人、超 仲良さそうに
同じ机に並んで座り、
"まさき君"が彼女に勉強を教えてる。
…ってか。
彼女はノートより彼の顔ばっかり見てるし
彼はわざとらしく時々顔をあげて
『俺の顔ばっか見てねぇで、
ちゃんと勉強しなきゃダメだろ。』
(←声、聞こえてません。私の妄想…)
みたいな感じで、
彼女の頭をコツンとしたりして。
なによ~っ、
こ、これ、絶対、
普通の先輩後輩じゃないでしょっ!
…カーッとした瞬間に浮かんだ、
カオリの顔。
カオリは、今日、
部活終わりで彼と約束してる、って言ってた。
部活終わりって…何時?
急いで席に戻り、
もう、ガチ寝モードに入りつつある
西谷君の背中をバシバシ叩いた。
『西谷君、西谷君!』
『…んぁ?もう10分たった?よーし、やるぞぉ!
XでもYでもかかってこぉい…ふわぁ…』
『違う、そうじゃなくてっ!
今日、女バス、何時まで?』
『ぁ?女バス?
俺らの隣でやってたから、午前中だな。
そういや、部活終わりで会ったから、
カオリも勉強誘ったんだけどさぁ、
彼氏とデートって、すっ飛んで帰った。』
…やっぱり…
『それがどーした?』
西谷君を引っ張って、
本棚の影からあの二人を見せる。
『ね、見て。あれ、カオリの彼。』
『…マジ?見間違いじゃねーの?
似てる人、とかじゃねーの?』
『間違いない。』
『…でも、あの二人、どー見たって
つきあってる感じだろ?
あーぁ、あんなにひっつきやがって…』
あんまりにも
私たちがガン見してたからか、
何か気配を感じたっぽい"まさき君"が
頭を上げてキョロキョロしてる。
思わず私と西谷君も、
本を探してるフリをして。
『どーする?俺、殴ってこようかっ?』
『ちょ、図書館でそれはヤバいでしょ!
とりあえず、座ろ。』
…席に戻ったけど、
もう、勉強どころじゃなくて。
西谷君は、今にもケンカモード。
…言うんじゃなかったかな…
私が頭を抱えたその時、
『あっ!!』