第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
土曜日の学校なんて
部活以外で来ることないから
校舎側の静けさにビックリする。
…そっと体育館を覗くと、
今日、体育館はバレー部が使う日らしい。
男子と女子が1面づつ使って部活中だった。
西谷君も、いる。
1年の頃、
カオリと一緒に帰る約束してた時、
バスケ部が終わるのを待ってて
バレー部の練習風景を見たこと、ある。
バレーをしてる時の西谷君は、
授業中とは別人だ。
体育祭や文化祭の時の
楽しそうな顔とも、また違う。
すごく真剣で、
すごく上手で、
すごく熱心で、
バレーをしてる時が、
1番、カッコいい。
…でも、私、今日、私服だし。
こっそり覗いてるのって、
中の人から見たら(てか、誰が見ても?)
明らかに、おかしいハズ。
なんか、知らないところで
誰かに誤解とかされても困るし、
見たいけど、
見たいけど、
西谷君を見に来たわけじゃないんだから
見たいけど、
見たいけど、
やっぱりおかしいから、やめとこ。
…靴箱で待とうかな。
あ、でも、直接、体育館に行ってたら
ここ、通らないか。
自転車置き場なら必ず通るかな。
…でも、あそこ、隠れられない。
西谷君が友達とかと来たら、
声、かけられないしなぁ。
いろいろいろいろ考えて、
校門の外の、
さらにひとつ先の曲がり角で
待つことにした。
…ここなら、
見逃すことはないし、
もし西谷君が誰かと一緒にいて
声をかけきれなくても
あぁ残念、って思いながら
後ろ姿、見送ればいいし、
もし私の姿が見つかっても、
この先のスーパーに来たことにすれば
不自然じゃないし…
あれ?つまり、
ちゃんと話せる可能性は
ナシに等しいってことか?
…だめじゃん、あたし。グズグズグズ
カオリのこと心配して来たはずなのに、
自分の心配ばっかして、だめじゃん…
そう思っていたら、
前の道を、ジャージ姿が通り始める。
バレー部、練習、終わったみたい。
歩いてダラダラ帰る女子のグループ、
じゃれながら走って帰る男子のグループ、
自転車でサーッと通りすぎる人や、
自転車を押す彼と並んで歩く彼女。
…こんな次々、人、来たら、
やっぱり、声、かけられないかもなぁ。
息が止まりそうな思いで見てたのに
西谷君は見つけられなくて、
『…やっぱ、ダメだね。』
諦めて帰ろうと踏み出した時、