第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
背の高い男の人が、カオリに近づく。
ここから顔は見えないけど、
カオリの表情と仕草を見てれば
それが"まさき君"なのは、間違い。
…なんだろ、この違和感。
二時間も待たされたのに、
カオリはちっとも怒った様子、
…例えば、文句言ったり、スネたり…
そんな表情をチラリとも見せず、
ただ嬉しそうに、彼について歩きだした。
学校にいる時のカオリなら、
きっとものすごく、ブーブー言う。
西谷君が宿題忘れてたり、
何かをする時間に遅刻したりしたら、
それこそ、猛烈に文句を言う。
(そして西谷君は言われ慣れすぎてて
ちっとも申し訳なさそうじゃない 笑)
そんなカオリがフツーだと思ってたから、
"まさき君"に対する態度が、
なんだかものすごく、カオリらしくなくて
それを考えてたら、
なんだか私のほうが腹が立ってきて。
それは、
待たせておきながら悪びれた様子がない
"まさき君"に対してなのか、
それとも、
あんなに待たされておきながら
文句ひとつ言わないカオリに対してなのか
自分でもよく分からないんだけど、
でもとにかく
全然、納得いかなくて。
自分に関係ないことなのに
…関係ないから、なのかな?…
無性に腹が立つこの感情を
どうしていいかわからなくて。
誰か、一緒に、腹立ててほしくて。
…気がつくと、私の足は、
自然と学校へと向かっていた。
カオリのことを話せるのは
西谷君しかいない。
今、
部活してるかどうかもわからないし、
してたとしても何時から何時までとか
もちろん知らないし、
会えたとしても、
なにから、どこまで、
どう話していいかとか
全然、わかんないんだけど、
とにかく、
学校に行くことしか、
西谷君に聞いてもらうことしか、
思い浮かばなかった。