第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
もしかして今日、
あの彼女のせいで
カオリはフラれた?
今ごろ、泣いてるんじゃない?
…明日は土曜日。学校は休み。
週明けまでなんて、待っていられない。
カオリのことが心配で、
塾が終わるとすぐに電話してみた。
『カオリっ、』
息が止まりそうな勢いの私に、
カオリの声が届く。
『なにー?どーした?』
…拍子抜けするほど、いつもの通りの声。
『げ、げん、元気?』
『えーっ?何言ってんの?
ほんの何時間か前まで、
学校で一緒だったじゃん!
元気に決まってるでしょーっ?』
…とりあえず、よかった…
もしかして、私の勘違いだったのかな?
そうだそうだ、きっとそうだ。
"高橋先輩"なんて、
珍しい名前じゃないもんね。
『何?綾、どうかした?』
私のほうが心配されてる(笑)
『ううん、え、ぇと、ぁ、そうだ。
明日、買い物つきあってくれない?』
『あー、明日はダメだぁ。
まさき君と映画見に行く約束してる。』
『そうなんだ、じゃ、いいや。』
うまくいってるなら、
それでいいんだもん。
『うん、ごめん。綾の買い物、急ぎ?』
『うぅん、大丈夫…ね、カオリ、』
『ん?』
『いつか、私も、まさき君に会わせてよ。』
『あー、そうだね。いつかね。』
『じゃ。明日、楽しんできてねー!』
そうやって、電話を切った。
…よかった。私の勘違いだ。
そうだよね、
キスもしたって言ってたし、
もうすぐ、クリスマスだし、
きっと、すごくラブラブな時期だよね。
余計な心配して、損しちゃった。
…その日、夢を見た。
西谷君と私とカオリと3人で
カラオケに行く夢だった。
3人、すごく仲良くて、
夢の中なのに、楽しかった。
1年8組の1年間、
私が1番仲良かった二人なのに、
今はもう、
部活に夢中な西谷君と、
彼氏に夢中なカオリと、
何にも夢中になれない私。
みんな、バラバラだもんね。
ずっと友達、って思ってたけど、
それって案外、難しいのかな…
夢の中の楽しそうな私を見ながら、
心のどこかは冷静で、
そんなことを思ったりした。