第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
そもそも私じゃ
"恋活"(←っていうのかな?)に関しては
ちっとも役にたたないのは
最初からわかってたことで、
カオリは、
バスケや小学校の頃の友達とか
自分のネットワークを使って
じゃんじゃん行動し始めた。
私は、学校で、
その進み具合を聞く係。
1つ、小さな発見や進展があるたび、
それはそれは嬉しそうな顔で
カオリは報告してくれた。
名前。
出身小学校。
電車で通学してること。
乗り降りする駅と、時間帯。
下校途中によく立ち寄るらしい店。
最初の頃は"高橋先輩"と言っていたのが
いつの間にか"まさき先輩"になった頃、
下校途中の先輩をつかまえて
カオリから告白し、
それはあっさり受け入れられて
二人はつきあい始めたらしい。
その頃から、カオリは
部活が終わるとソッコーで
学校を出ていくようになった。
部活終わりから家の門限までの
わずかな間を先輩と過ごすために。
あの店でアイスおごってくれた、とか
二人お揃いのストラップ買った、とか
そんな報告を何度かしてくれるうち、
"まさき先輩"と呼んでいたのが
"まさき君"になって、
そしてある日、
『…昨日、キスした❤️』と
カオリは、小さな声で教えてくれた。
すごく嬉しそうで、
とっても可愛くて、
毎日が充実してるのがよくわかる。
恋が実るって、
こんなに幸せなんだな、って
まだまだ、恋の"こ"の字も知らない私は、
カオリのことを、眩しく思ってた。
カオリから聞く"まさき君"は
それはそれはステキな彼氏で…
その頃にはもう、
西谷君とカオリが
ジャレてる姿を見ることは
ほとんどなくなって、
自然と、私が西谷君と話すことも
ほとんどなくなって、
…1年8組の時の
居心地のいいトライアングルは、
あっという間に、壊れてた。
そんな時、私、耳にしちゃったんだ。
塾で。
カオリの彼氏…まさき君…と
同じ中学の子が、
"高橋先輩にコクったら成功した!"
って、
隣に座ってた友達らしき人に話してたのを。
え?
カオリは?
フラれたの?
息が、止まりそうだった。
詳しく聞きたかったけど、
全然知らない人だし、
なんて話しかけていいか、わからなくて。