第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
『ニシノヤって、私にとって
最強のトモダチなんだよね。』
『最強の、友達?』
『そ。
男とか女とか関係なくて、
もう、一番、遠慮なくいられるトモダチ。
あ、綾は、別だから。綾は、親友ね。』
『"最強のトモダチ"と"親友"は、
一緒じゃないの?』
『私の中では、違うんだよねー。
"親友"の綾には、何でも話したいし、
何でも言ってほしいし、ケンカしたくない。
でも、
"最強のトモダチ"…ニシノヤは、
別に、秘密があっても全然、いいし、
悪口だってお互い言い合うし、
ケンカも平気だし仲直りも簡単。
何でもニシノヤには負けたくない、
って思う気持ちはいっぱいあるし、
弱味は見せたくないところとかは、
ライバルみたいな感じかも。
…これって、どう考えても
つきあう感じじゃないよね?』
『うん、違うっぽいね(笑)』
笑える。
この二人、確かにいつも競ってる。
背の高さとか、テストや部活の結果とか、
足の速さとか、学校に着く時間とか。
だけど、一応、ちゃんと、聞く。
『それってさ、
今はつきあってなくても
カオリ的には実は好き、
…とかっていうのとも違う?』
『違うでしょー!
だってあたし、ニシノヤ見て、
メラメラ、とかコノヤローとか、
ムムムッ!とかなら思ったことあるけど、
キュン、とかしたこと1度もないもん。』
『キュン?』
『恋って、
"キュン"とか"ズキン"なんでしょ?
あたし、まだ経験ないけど。綾、ある?』
『キュン、とか、ズキン、とか?』
『そうそう。
そういう恋の効果音?!みたいなの、
胸のなかで鳴り響いたこと、ある?』
…考えてみる。
西谷君を見てるとドキドキはするけど、
それは、
"居眠りしてて怒られないかな?"とか
"まだ来てない…間に合うかな?"とか
"テスト、赤点じゃないかな?"とか
そういうドキドキで、
キュン、とか
ズキュン、ではない気がする。
『ない、気がする。』
『あたしもー。
あーぁ、そういうの、早く経験してみたーい!
マンガみたいな恋、したいよー!』
カオリのこの様子からすると、
本当に、西谷君とはつきあってないみたい。
…聞けて、よかった。
なぜだか私がホッとしてしまう。