第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
先生が来るまでに全員が揃って、
なぜかわたしがほっとする。
…自分でいうのも何だけど、
真面目なキャラだからね。
無駄に先生、怒らせたくない。
みんなそれぞれ、
机の上のプリントとか教科書に
名前や必要事項を書き始めた時、
『あぁぁぁぁっ、筆箱、忘れた!』
隣の男の子が頭を抱えてうめく。
『学校来んのに筆箱忘れるとかって、
ニシノヤ、ヤル気、なさすぎでしょ!
頭悪すぎ、バッカじゃないの…って、
あぁぁぁぁぁっ、信じられない、
私も筆箱、忘れてるっ!』
と、後ろの女の子が、ガタンと頭を
机にぶつける音がする。
『学校来んのに筆箱、忘れてるとか
お前も相当、バカじゃねーの?』
『ちょっとぉ、ニシノヤだけには
バカって言われたくない!』
『俺より足、遅いくせに!』
『そんなの、今、関係ありませーん!
私より、背、低いクセに!』
『ぁんだと?それこそ、関係ねぇだろ!
男は中学から、グ~ンと伸びんだよ!
見てろ、そのうちお前なんか、上から
ゴリゴリ、見下ろしてやるから!』
『あの!』
子供のケンカのように(子供だけど。)
激しさを増していく、
この場に全く関係ない話題(笑)に
耐えきれなくなった私は、
思わず、口を挟んでしまった。
『…筆記用具、貸しましょうか?』
『まじ?』
『超 助かるぅ!』
『だから、少し、静かにして…』
『俺ら、うるさかった?』
『ほらぁ、ニシノヤといると
私までトバッチリくらうからさぁ…」
『何がトバッチリだよ、
お前だってガッコ来んのに
筆箱、忘れてきたくせに。
入学式なのに髪もはねてるしよぉ。』
『筆箱忘れたのはニシノヤも一緒でしょ!
あんたは初日から髪、たてすぎ!』
…プチン。
私の中の真面目スイッチが
振り切れた音がする。
『うーるーさーいーでーすー!
筆記用具貸すから、静かにしてっ!
ちなみに男子の整髪料は禁止です!』
…初日、朝から
クラス中の注目を浴びた、私たち3人。
それをきっかけに、
遠慮なく言葉を交わすようになり、
みさご川小学校出身で
元気一杯の賑やかな
西谷 夕君と
佐藤 カオリちゃんは、
雀原小学校出身で
引っ込み思案の私、
森島 綾の
千鳥山中学校1年8組で
最初の友達になったのでした。