第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
居酒屋の気取らない雰囲気と
木兎の盛り上げ上手な会話、
そして、
俺のさりげない気遣い(笑)で
会話は途切れることなく続き、
彼女のことが少し、わかってきた。
森島 綾、という名前。
(綾ちゃん、と呼ばれることに
もう、抵抗はないようだ。)
近くの医科大学の6回生になりたて。
田舎から上京してて、独り暮らし。
学生時代はテニスをしていたけど
故障で全然結果は出せず。
だから、将来は
もちろん医者…だけどそれだけでなく、
スポーツドクターもやりたいそうだ。
『な、俺、一番、知りたいのはさぁ、』
木兎が前のめりで訊く。
『今、彼氏、いんの?』
相変わらず、ハッキリ訊くなぁ(苦笑)
そして綾ちゃんもサラッと答える。
『今?いない。
申し訳ないけど、恋愛する予定もナシ。』
『えーっ?なんで、なんで?
せっかくの大学生活じゃん!
恋も勉強も、
楽しまねぇともったいねーよっ?
俺と付き合ったら、
絶対、楽しいって約束するからさ、
な、俺と付き合ってっ!』
うん、バレーと同じで、
ホレボレするほど真っ直ぐな攻撃(笑)
『うん、楽しそうだと思う!』
お?木兎の攻撃、決まった?
『楽しそうだと思うから、
今はダメだな。ごめんね。』
…ぁ。
俺の心に、ザワッと波が立つ。
その感覚を言葉に置き換える前に、
木兎がもう一度、スパイク。
『えーっ、なんで?
楽しそうだからダメってどーいうこと?
意味、わかんねーっ。』
『木兎君とつきあうの、
絶対、楽しいってわかるから、
勉強がおろそかになりそうだもん。
今年は国家試験だから、それはヤバイ。』
『応援するって。俺の応援、効くよ~、
なぁ、オイカワ、そうだよな?』
…相棒の味方をするべきだよな。
『確かにコタローちゃんはいつも、
前向きだしパワフルだし賑やかだよね。
それが応援になるか邪魔になるかは
わかんないけど(笑)』
『オイカワ、そこはノッてきてっ(笑)
な、俺みたいな応援団長、いないよ?
とりあえず、お試しでいいからさぁ。
センパイに怒られても、
勉強の調子がイマイチでも、
俺がいつでも笑わせる!
楽しませる!応援する!』
攻撃の手を緩めない木兎。
確かに、
言葉のひとつひとつに嘘がない。
この情熱で口説かれたら、
きっと女は幸せだ。