第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
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ヒュ~…ドドドーン。
バラバラバラ…
パンパンパンパン、パンッ…
この日一番の大きな花火が
夜空いっぱいに広がって、
会場からは自然と拍手が湧く。
『以上を持ちまして、
本日の花火大会のプログラムの
全てを終了いたします。
どなたさまもお気をつけて…』
前の恋を思い出しているうちに、
ふと気がつけば花火大会は
終了のアナウンスが流れ、
河川敷に集まった人たちも
ぞろぞろと来た道を戻り始める。
それぞれの隣にいる人と、
語り合い、手を取り合い、微笑みあって。
隣に座る嫁が、水筒を差し出した。
『あと少し、焼酎入ってる。飲んじゃう?』
『…あぁ、そうだな。今、混んでるし。
も少し、ゆっくりしてくか。』
さっきまでの喧騒がウソみたいに
辺りは静かで暗くなっていく。
『…1年前、ふたりでここに来た時は
結婚するなんて思ってなかったね。』
『まぁな…でも、もし結婚するとしたら
綾姉かな、とは思ってたぞ。』
『(笑)ほんと?』
『ホントだって。
まぁ、"結婚する!"じゃなくて
"もしするとしたら"だけど。』
『でも、しちゃったもんね。』
『なぁ。一年後のことなんて、
ホント、予想出来ないもんだ。
…これからはずっと、
変わらずにいられたらいいな。』
綾姉が笑った。
『繋心のその"変わらずにいたい"って
なんか、ほとんど呪文だね。
自分に言い聞かせてるみたいだよ、
"俺は意地でもこのまま生きていく~"
…って。』
『そうか?』
『うん。』
『…そうかもしんねぇな。
変わるのも大変なんだろうけど、
変わらないってのも、
それなりにリスクがあるし。』
綾姉は、
俺の前の恋愛のことを知っている。
変われなかった俺の
そのまま全てを受け入れてくれたのが、綾姉。
『でもさ、
自分では変わらないつもりでも、
変わっちゃうこともあるよね。』
『まぁな。イヤでも歳はとるし。』
『…それでも、繋心、
ずっと変わらないでいてくれる?』
『なんだよ、急に。
なんも変わってねぇだろ?
あ、白髪とかシワが増えた、とか?
気にしてねぇし、気にすんな。
そんなん、お互い様!』
そうやって一緒に歳、重ねてくために
俺達、結婚したんだからさ。