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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)



掴んでいた手を、離す。

黙って車を降りようとする綾。
ガラスに映る傷ついた顔を見てしまうと、
かける言葉が思い浮かばなくて。

…あぁそうだ、
あと1つだけ、どうしても。

『あのさ、』

『なに?』

こっちを向かずに聞き返す声は、
今まで聞いたことないくらい、
力のない声。

『町内会チームのマネージャー、
辞めるとかいわねぇでくれよな。』

フッ、とこっちを向いた。
怒った顔。

『ほんと、勝手。腹立つ。
そんなの、あたしが自分で決めるし。』

『あそこはお前がいねぇとダメだ。
俺らのつきあい知ってるヤツは
ほとんどいねぇし、
…もし綾が俺と会うのがイヤなら、
俺が、辞めるから。』

『…前、つきあうことは
皆には内緒にしよう、って
ケイ君が言いはったのは、
もしかして、
こうなることを予測してたから?』

『…んなわけ、あるか。』

『…考えとくけど約束はしない。
ケイ君だって何もかも、
私の意見なんかちっとも聞かずに
決めたんだからね。』

…綾の父親の気持ちが
少しだけ、わかった気がした。
意地っ張りもわがままも、全部、
俺に気を許してるからだと思うと、
全然、腹なんかたたねぇもんだな。

怒ったままの顔で、
だけどしっかりと俺の目を見て、
ハッキリと、言う。

『言いたいこと、それだけ?
なら、私、帰るよ。』

『あぁ。』

『ほんとに、行っちゃうよ?』

『あぁ。』

『ごめん、とか言わなくていいの?』

『まだ言ってなかったか?』

『言ってない!』

『…ごめんな。
こんなに大事だって思うのに、
お前のために、俺、変われなくて、
ほんと、ごめん。』

一瞬、目線が反れた。
静かな空気。
綾が息を吸う音が聞こえて、

目が、あう。

茶色い瞳の
優しい、目。

そして、聞こえた。


『…変わらないで、ね。』


"変わらないで"


あぁ、許してくれた。
変わらないことを選んだ俺の生き方を
ちゃんと、受け入れてくれた。


ありがとな。


俺たち、
"添い遂げるたった一人"
…にはなれなかったけど、

綾は俺にとって、間違いなく、

"一生、忘れられない人"だ。


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