第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
『…じゃ、どうしたらいいの?』
それは。
『…』
『言えないの?』
今、しかないのに。
決めてきたはずなのに。
…言葉に、ならねぇよ。
『別れよう、とか言うつもり?』
『…』
『そんなことだろうと思った。
連絡しても繋がらないってことは
きっとそのつもりなんだろうな、って
なんとなく、想像してたけど。』
『違う!それは、違う!
あの日は帰ってからホントに忙しくて、』
『電話一本、かけられなかった?』
『…電話は…
夜なら、かけられた、けど、
考えがグチャグチャだったから、
何て言っていいか
わかんなかったんだよ。』
『…勝手に悩んで、勝手に決めたんだ。』
『…』
『あたしの気持ちは関係ないんだ。』
『…』
『…腹立つって。
勝手だし、弱腰だし、
ホント腹立つって思って、もう、
そんならこっちからお断りって思って、
本気で顔みたくなかったから、
今日、バレー休んだんだけど、
だけど、』
だけど?
『ケイ君から電話あって、
なんで練習来ないんだ、って聞かれたら
途端に練習行けばよかった、って思って、
すぐ行く、って言われてびっくりして、
ホントにすぐにピンポーン、ってなって
玄関開けたらケイ君いて、
ケイ君見たら、嬉しくて、
すごくすごく嬉しくて、』
うん。
顔見たら、わかった。
俺も、嬉しかったし。
『…どうせ最後なら
困らせてもいいや、って
いっぱいわがまま言ったのに、
いつもなら恥ずかしがるようなデートにも
つきあってくれて楽しくて、
もうおしまいっ、て思ってたはずなのに、
やっぱりケイ君、いなくなるなんて、
あたし、信じられないくらい
ケイ君といると楽しくて嬉しくて、』
うん。
俺もだ。
終わりだって決めてるのに、
やっぱり顔見てると
俺も、すげー楽しくて幸せで。
だから、
まだ、言えないままなんだ。
終わりだ、って。
別れよう、って。
お前を幸せにするのは
俺じゃない、って。
俺に惚れてくれてありがとうも、
好きだからこそさよならだとも、
言えなくて。