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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)



ずっとこのままでいたいと思うのに、

透明のゴンドラは
てっぺんにやってきた。

残り、ちょうど、半分、
…3分半。

砂時計なら、
自分で倒して
砂の流れを止めることができるけど、

このゴンドラは、
自分じゃ止められなくて、

もう、
終わりに向かう道しか残されていない。

空と地上の間を
静かにゆらゆら揺れながら、
時計の秒針のように、
確実に、進んでいく。

…手をギュッと握りしめたら、
綾は、フフ、と笑った。

『いつもはあんなに恥ずかしがるのに
今日はケイ君の方が手を繋ぎたがるね。』

…当たり前だ。
離したくねぇに決まってる。

てか、
照れたりしてねぇで、
もっと、いつも、手を繋げばよかった。

『観覧車なんて
絶対、拒否ると思ってたのに。
もっと早く誘えばよかったなぁ。
ホントはね、いつか、
観覧車から、花火、見てみたかった。
あ、でも!
あの山の上から見たのもよかった!
あそこは穴場だね!
でも私、場所、わかんないからなぁ。
ケイ君とじゃないと、2度と行けないか。』

…あの日、初めて抱いた。
だけどその後、シャツがなくて、
大笑いだったな。

『…2年もつきあって、
今日みたいなフツーのデートは
これが初めてだなんてさ、
ケイ君との想い出は、全部、
夢だったんじゃないかと思っちゃう!』

明るい声で。

最後、とは一言も言わずに、
だけど、終わりだとわかってる言葉。

昨日おととい、俺が悩んでる間、

綾は綾なりに、
電話が鳴らないことの意味を、

きっと
一人で考えて

親父さんとケンカして
おふくろさんに相談して、

そしてたくさん泣いて、
…腹を決めたんだろう。

俺の決めたことを、
彼女は受け入れる、と。

やり残したことをあれこれ考えて、
出来ることならあと一度だけ、
笑ってそんな時間を過ごせることを
きっと望んでたはずだ。

観覧車は、もう、残り四分の一。

彼女が望んだ以上のことを
してやりたい。


地上が、

ゴールが、

終わりが、

すぐそこ。


『夢じゃ、ねぇよ。』

全部、覚えててほしい。
背中と頭をきつく抱きしめて、

キスをして、
キスをして、
キスをして、

また抱き締めて、
キスをして。

下で待ってる兄ちゃんの姿が
チラッと見えたけど、

そんなの、かまわなかった。

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