第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
結局、電話できないまま
あれから2日が過ぎ、
今日は、火曜。
町内会バレーの練習日だ。
どんな顔して会おうか。
綾は今までみたいに、
全く普通に接してくれるだろうか?
…綾の様子次第で、
練習の後、会おうって誘ってみよう。
そんなことを考えながら体育館に行くと、
『あ、烏養さん、お疲れ様です!』
…この春、大学を卒業して
町の役場職員として働き始め、
それと同時に町内会チームに入ってきた、
教え子の山口。
その山口が、
練習の準備をしていた。
『…どした?マネは?』
『森島さん、休みだって
島田さんに電話があったそうです。
だから、今日は俺が、マネの仕事、
代わりにやろうと思って…』
『山口、相変わらず、気が利くな。』
『森島さん、どうしたんですかね?
休むことなんか滅多にないのに。』
『…さぁな。忙しいんじゃね?』
山口の問いかけには
興味のないふりをしてやり過ごしたけど…
俺に会うのを避けてる?
それとも、本当に、具合が悪い?
もしかして、親父さんに、止められてる?
そういえば、あの日の5件の着信以来、
パッタリと連絡がこなくなった。
信じて待っててくれる、と
勝手に思っていたけど、
もし、そうじゃなかったとしたら。
いや、それより何より、
もし本当に
"信じて待っててくれてる"としたら。
…いても立ってもいられなかった。
ちゃんと、会わないと。
ちゃんと、話さないと。
『山口、』
『はいっ。』
『わりぃけど、俺、急用、思い出した。
今日はもう、抜けさせてもらうから。』
『わかりました、気をつけて!』
…体育館を飛び出して、
すぐに車を走らせた。
週末、来たばかりの綾の家。
立派な門と、
手入れされた庭木。
その向こうの家には、
オレンジ色の灯り。
…帰ってる、だろうか?
あの日以来、
どうしてもタップできなかった
綾の名前を呼び出し、
イッキにパチン、と触れると、
1コールで、繋がる。
…待っててくれたんだな…
『綾、』
『ケイ君…練習は?』
『綾こそ、なんで来ねーんだ?』
『…』
『今、どこだ?』
『家。』
『…すぐ、行く。』
返事は聞かずに、電話を切った。
断られたら、困るから。