第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
言われてカチンとくる、というより
言いにくいことをハッキリ言うこの人の
俺に対する本気度が伝わってきて、
とても中途半端な答えは出来なかった。
そんな俺に畳み掛けるように、
きっぱりと、でも、
決して冷たくはない声で
言葉は続く。
『ハッキリ言えば、私は、今の君に
綾を嫁がせたくないと思ってるし、
まだ君を娘婿と認める気もない。
だけど、つきあいそのものに
反対してるわけじゃないんだよ。
若いうちに、いろんな恋愛をするのは
いいことだ。
身の回りにいないタイプが
魅力的に見えるのも、わかる。』
そこまで言うと、
冷めたお茶を一気に飲み干してから、
グッと俺を見据えた。
『選択肢はたくさんあるし、
正しい答えがあるわけでもない。
君と綾にしか決められない答えを
選んで欲しい。』
『…はい。』
それしか、言えなかった。
反論も、意見も、言えなかった。
『あぁ、そうだ。
綾はきっと私を"頑固親父"とか
"クソマジメ"とか言ってるだろ?』
『…そんなこと…』
確かに言ってますけど(笑)
『その通りだし、それでいいから、
もし話がこじれたら、私のせいにしなさい。
"俺はあんな親父とやっていくのは無理だ"
くらいに言っておけばいい。』
『でもそれじゃ、彼女、
ますます、反抗しますよ?』
『いいんだよ、
嫌われたって反抗されたって、
娘を幸せにするのが父親の役割だ。
どんなに抵抗したって切れないのが
親子の縁だからね。
…そんじょそこらの男女の縁なんかとは
比べ物にならないよ。』
ニヤリ、と笑われる。
『それはつまり、
俺達の縁は、所詮、そんなもんだと…』
『そんなつもりは、ない
…とも言い切れないけれど(笑)
もちろん、親を越える縁もあるだろう。
君らがそうだと証明してくれるなら、
むしろ私も、認めざるをえないしね。』
…わざと
悪者になろうとしてくれてる?
『どうだい、父親と彼氏の勝負。
いつでも受けて立つよ。』
また、ニヤリ。
ケンカ売られてるように聞こえるけど、
なんとなくそうじゃない気がして、
俺から、トスをあげてみる。
『その勝負、バレーで決着つけてもいいですか?』
『そこは…ゴルフにしてくれ(笑)』
一瞬、立場を越えて笑いあえた気がした。
わかりあえた、とまでは思えないけど。