第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『あと少しかかりそうだから…
間に合えば、行こうかな。
…どっちにしても電話するから
えと、どっちか、連絡先を…』
『俺、鳴らす!番号、教えて!』
驚きのスピードで
スマホを取り出した木兎。
彼女の言う数字を
タタタカタタタタッ…と打ち込む。
『じゃあ。もし間に合えば、あとで。』
相変わらず
白衣のポケットに手を入れたまま
階段をのぼって去っていく彼女に
『絶対、おいで~!待ってるっ!』
…と声をかけて見送る木兎と、
そのやりとりを
ずっと黙ってみてた俺。
後ろ姿が見えなくなると
木兎がVサインで振り返った。
『番号、交換しちゃったしっ!』
『…見事な展開だったね。』
『な、飯、行こ!』
『俺、いないほうがよくない?
二人きりのほうが誘いやすいじゃん。』
『だーめーだーって。
オイカワいてくんないと、
きっと俺、暴走するから。
別に、今すぐ口説かなくていいんだ。
フツーに仲良く、飯、しよーぜっ。
な、な、頼む。』
…木兎にそう言われると、断れない。
近くの居酒屋で、二人して
彼女からの連絡を待つことにした。
『まずは今日の試合の絶好調と、
綾ちゃんとの進展に、はい、カンパ~イ』
木兎が勢いよく、
ビールのジョッキをぶつけてくる。
『ぷはーっ!
オイカワが相棒で、ホントよかった!
何もかも、オイカワのおかげだしっ。』
『コタローちゃんが絶好調だと
俺も嬉しいけどさ、』
…すごく機嫌がいいから、
密かに思っていたことを聞いてみる。
『コタローちゃんのファンの子なら
もっと…ほら、なんというか
かわいい子とかセクシーな子とか
ノリのいい子とか元気な子とか
いっぱいいるじゃん?
…なんでそんなに綾ちゃんに
こだわるのかなー、って。』
木兎は、
キョトンとして言う。
『オイカワ、お前、いっつも
おんなじタイプの子とつきあう?
それ、意味、なくね?』
…どういう意味だ?
『あ、でもそもそも、
オイカワ、ちゃんとした彼女、作らねぇもんな。
それこそ、俺にはわかんねーけど。』
…わかんないだろうね。
器用で、真っ直ぐで、影がない君には。
俺の返事なんか待つこともなく、
木兎は言葉を続けた。