第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
チュポン。
ビール瓶を、抜く。
そして、
綾の口から、ペニスも抜く。
向き直って顔を見る。
口の端に、透明な筋が光る。
手を使えない彼女にかわって、
俺の右手の親指で、その筋をぬぐう。
『わりぃ。ちょっとやり過ぎた。
…苦しかったか?』
『苦しかったよ。でも、』
手を縛られて、
浴衣ははだけて、
口の横に涎の跡がある。
見た目はほとんど、
無理やり犯されてるのと
変わらないくらいだというのに。
『すぐ、やめてくれた。
やっぱり、優しいもんね。
口は悪いし照れ屋だし意地っ張りだけど
ちゃんと私を大事にしてくれてるって
知ってるから。何されても平気。』
『…それは、』
真っ直ぐな信頼。
ありがたいのに、ちょっと痛い。
…こんな子の彼氏が、
俺でいいんだろうか。
もっと、誠実で安心安全な男と
つきあったほうがいいんじゃねぇか?
火遊びも、度が過ぎたら、火事だ。
俺は綾を、燃やしすぎてねぇか?
心の奥の奥の奥でそう思ったけど、
今、口に出来ることじゃなくて。
…今日は、この旅行は、特別な環境だから。
1年たったし、そのうち、俺に飽きるだろ。
それまで、"若気のいたり"っていう時期を
一緒に過ごせれば、いいじゃねぇか。
手早く、ゴムをつけ、
彼女の両脚を揃えて、俺の肩に担ぐ。
浮き上がった腰の真ん中。
閉じててもすぐに挿入できるほど
びしょ濡れの、入り口。
『おい、挿れるぞ。締めとけ。』
『…やっと、ケイ君から挿れてくれるんだね。』
目を瞑って、唇を噛み締めて。
きっと、想像してる。
初めて縛られて、
こんな無理な体勢で犯される自分を。
…いろんなこと、考えたけど、
目の前の快感には、勝てなかった。
俺だって、
こんな贅沢な時間、
こんなたっぷりのセックス、久々だ。
後のことは、
後で考える。
とりあえず、
『…んぁぁぁっ、』
いきなりの、挿入。
露天風呂では、挿入はしたけど出してない。
飯の時も、イタズラしながら耐えてきた。
さっきの座位は綾の主導。
やっと、俺が、動ける。
今日、朝からずっと見てきた
彼女のいろんな表情と、
目の前のあえぐ姿を重ねながら、
思い切り、腰を動かす。
若くて、
かわいくて、
しっかりしてて、
俺のことが大好きで、
…愛おしくて仕方ない、彼女。