第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
綾が言っていた通り、
8時に仲居さんが部屋に来て
夕食の膳の準備を始めた。
その途中で、綾が戻ってくる。
『おぅ、おかえり。』
『…ただいま…』
真っ赤な顔で、こっちを睨んでる。
『おかえりなさいませ、
どうぞ、そちらにお座りください。
お風呂、いかがでしたか?
お飲み物は、何になさいます?』
ほがらかに話しかけながら
準備をする仲居さんに、
言葉少なに返事をする綾。
知らん顔をしながら
それをニヤニヤして見守る俺。
『はい、それじゃ、
お食事、順番にお持ちしますので、
どうぞお召し上がりください。』
仲居さんが扉を閉めて出ていく。
『よし、乾杯すっか。』
『ケイ君!』
『ん?』
『…取ったでしょ。返して。』
『何を?』
『…ブラと、ショーツ。』
取った。
脱衣所の綾のカゴから、
その二つをこっそり、取ってきた。
今、俺の浴衣の袂に入ってる。
だから彼女は今、
ノーパンノーブラで浴衣を着てるはず。
『だって、いらねぇだろ?』
『いる!』
『すーぐ濡れるんだからさ。
せっかくの勝負下着、
汚したらもったいねぇ。
終わってからつけた方がいいって。』
『よくない!』
『脱がす手間、省けるし。』
『省かないで!』
『お?ジワジワ脱がせて欲しいのか?
あぁ、そういう焦らしプレイがいい?
へぇ、そういうのが好きなのかぁ。』
『もう!意地悪言わないで、返して!』
…あぁ、楽しい。
困った顔、見るのも、楽しい。
拗ねた顔、見るのも、楽しい。
『そんなことより、乾杯しようぜ、ほら。』
カチン、とグラスをあわせる。
風呂の後の、この冷たい一杯。
目の前でモジモジしてる彼女。
最高だ。
この後、どうやって抱いてやろうか。
考えただけで、
もう、俺の方こそ
股間がモジモジしてくる。
夜は、長い。
じっくり、モジモジしようじゃねーか。
料理を食べながら、訊く。
『黒、なんだな。』
『何が?』
『勝負カラー。』
『…』
黒の、下着だった。
見るからに、新しい。
『いつものイメージだと
ピンクとか黄色とかと思ったから。』
『…そっちの方が、よかった?』
『いや、俺、黒とか赤とか、好き。』
『よかった。
初めて、黒い下着、買ったんだもん。』
…俺の為の、黒。