第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
最初は押されぎみで始まった
俺と綾のつきあいも、
そのうち、
なんとも居心地のいい感覚へと
かわっていった。
チームの中では、今まで通り。
意地になって隠すわけじゃねぇけど
極力、バレたくない、と言い張った俺。
別に悪いことしてるわけじゃないし
オープンにしちゃった方が、
他の人から誘われなくてラク、と
譲らない、彼女。
『そこが問題なんだって!
俺はチームの中に敵は作りたくねぇ!』
『私が他の人に誘われても平気?
イチイチ中途半端なウソで
チームの仲間に期待をもたせたくない!』
『期待持たすな!ハッキリ断れ!』
『だったらケイ君と付き合ってるって
言うのが一番早いじゃん!』
『それは俺が困る!』
『それじゃ私が困る!』
…という、
本人たちには大問題だけど
端からみたら、多分、
バカップルの痴話ケンカ(笑)を
何度か繰り返し、
結局、嶋田と滝ノ上に泣きついて
客観的意見も含めて話し合った結果、
"今まで通り"
ということになったわけだ。
…今まで通り、
マネージャーと、チームの一員。
人前では名字で呼ぶ。
綾は俺を特別扱いしない。
俺も、綾が他のヤツラに
アプローチされてても、妬かないし、
綾はもし訊かれたら
"彼氏がいる"はOKだけど
それが俺だとは言わない。
目立つようなデートはしない。
…そんな感じ。
つまんねーことばっかりかもしんねぇけど、
こんな小さな町で、
こんな年の離れた、
こんな彼女とつきあう、というのは
思いもよらないところで敵が出来そうで、
この町に骨を埋める(←おおげさ 笑)
つもりで生きてる俺としては、
仕事と女と金のダーク?!な噂話には
極力、関わりたくねえからな…
要望がだいたい通ってほっとしてる俺。
それに対して、綾は最初、
『なんでコソコソしなきゃいけない?』
と不満顔だったけど、
そこはほら、
好奇心旺盛で刺激好きな彼女のことだ。
車で遠出のデートが多いことを
楽しみにしてくれるようになり、
さらにそんな時
知り合いに見られるのを避けるため、
町を出るまで
助手席の後ろの後部座席に座るのを
『コソコソ感が芸能人みたい(笑)』と
それはそれで楽しんでるようで、
(秘密って、恋のスパイスなんだなぁ。)
つきあいは、順調に続いた。