第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
『気が利くなぁ。』
『結婚しちゃうと
なかなかデートもしないから…
たまにはこんな楽しみも、ね。』
…そうだった。
一年前、まだ結婚する前に
俺から花火大会に誘ったのも
『結婚するなら、今の相手が
"最後の恋"になるんだから、
ちゃんと恋愛を満喫しとけ!』
という嶋田達のアドバイスからだった。
ようやく陽が傾き始め、
花火が上がるまで、もう少し。
薄暗くなってきたのをいいことに?
前に座ってる大学生カップルが
イチャイチャし始める。
ヨメさんが、俺の耳元で囁く。
『去年も、いたよね。
目の前で浴衣のカップルが
イチャイチャしててさ、
"この二人、明日の朝、
浴衣、着られるかな?"って
いらない心配したの、覚えてない?』
『そんなこと、あったか?』
『あったのよ~。覚えてない?』
…去年の花火大会、浴衣の話?…
んんんっ、
『俺も思い出したことがあるぞ!』
『なに?』
今度は俺が、
ヨメさんの耳に口許を近づける。
絶対、人に聞かれたくないことだから。
『な、今年もノーブラ?』
『は?!』
『去年、帰ってすぐ玄関で脱がせたら、
ノーブラだったよな!』
ポォッッッッッ…と、ヨメの頬が赤くなる。
『な?今日は?』
『なーんでそんなこと、覚えてんの(怒)』
『あれこそ、サプライズだったからさぁ。
…な、今日も?』
『教えません!』
『今年はさらにサプライズで
ノーパンノーブラって演出ってことは…』
『ば、ばっかじゃないの?!
変態エロオヤジ!!』
『誉め言葉だな(笑)
いいよ、帰ったらすぐ確認してやる。』
『もぉっ!』
…幼馴染みでもあるヨメさん。
結婚して同じ家に住んでるけど、
生活のリズムが全く違うから
外で会うことは滅多になくて、
新婚旅行ですら、行ってない。
だからだろうか。
それほど遠くに来てるわけでもないのに、
なんとなく気持ちがはしゃいでしまう。
今夜は久々に浴衣プレイを楽しむか(笑)
冷たい焼酎を呑みつつ
横に座るヨメさんをからかいながら
そんなことを考えていたら、
…思い出してしまった。
前の彼女と、
1度だけ、旅行に行った時のこと。
エロくて甘い、想い出。
…あの頃が、
年の離れた彼女との恋愛モードの
ピークだった気がする。
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