第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
『ケイ君、おうちに、電話して。』
『は?』
『ご飯、いらない、って。』
『はぁっ?』
『いいから!
親子の仲でもマナーは守りましょう!』
…そう言われちゃ反論も出来ず、
結局、家に電話した。
母ちゃんは却って驚いてる。
『わざわざそんな電話して来るなんて
どうしたんだい?頭でも打った?
あ、それとも
歳上の女と付き合いだしたとか?
親の気持ちがわかるような優しい嫁…
ん?あ!あんたまさか、婦人部に
手を出したんじゃないだろね?!
あんたをもらってくれるなら
誰でもいいって言ったけど、
あたしより年上は勘弁だよ?!』
あまりにヒドイ言われように
却って笑いが出る。
『妄想しすぎ(笑)ま、そんなわけだから。』
目の前で笑うのを我慢してた綾も
通話が切れたのを確認して
こらえきれない、というようにケラケラ笑う。
『日頃の親不孝が
手に取るように想像できちゃう~!』
『親不孝ならお前もだろ?
俺みたいな年上の自由人と
つきあってるなんてことがバレたら
親、泣くぞ?』
『娘の幸せが親の幸せでしょ?』
『都合よすぎだ!』
『もぅ、この話、やめ!
お腹、すいたね、ご飯、ご飯!』
『勝手に話、終わらせてやがる(笑)』
すっかり
手のひらで転がされてる気がするけど
それが全然、イヤな感じじゃないのは
やっぱり、年が離れてる分、
こっちがおおらかに
受け止めてやれるからだろうか。
…その日はそのまま飯を食って、
ラブホの二時間休憩コースで
昨日の車の中とは違って
ちゃんとベッドの上で落ち着いて抱き、
日付が変わる前にはちゃんと
家に帰らせた。
こんな規則正しい恋愛、
いったい、いつぶりだろうか?
時間に限りがあると思うと
なんか、
ムダに眠ったりするのがもったいなくて
時間の限り、あれこれヤりたくなるし、
チームのヤツラには内緒だと思うと、
密室で堂々とイチャつけるのが
すごく貴重なことのように感じる。
そうだ。
俺たちはスッカリ、
お互いの新鮮さにハマっていった。
綾は、
年上で、周囲にはいない
自由気ままな"俺"という男に。
俺は、
うんと若くて
しっかり者なのに
俺の前では可愛らしい
"綾"という女に。
この恋を一言で表すなら
…"刺激的"という感じだろうか…