第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
ほわほわの洗濯物を畳む。
…といってもたいした量じゃないから
あっという間に終わるわけで。
『ありがとな。助かった。』
『どういたしまして!
こんなデートも、新鮮だから大歓迎。』
…沈黙。
『ぁのさ、』『あのね、』
言葉がぴったり、かぶる。
『なんだ?』
『ケイ君から先にどうぞ。』
昨日、反省したことを謝りたい。
『んじゃ、先にわりぃな。
…昨日、飯も食わせないまんまで、
俺、気が利かなかったな、と思って。』
ケラケラケラ、と彼女が笑う。
本当に、夏のヒマワリみたいな笑いかた。
明るくて、元気があって、
眩しくて、気取りもなく、
可愛くて、若さが溢れる。
『昨日は
あの後、食事なんて無理だったでしょ!
だって、ケイ君、上半身、裸だよ?!』
『それも、そうだな。
いや、帰って俺が飯がなかったみたいに
綾も飯ヌキだったら
申し訳なかったな、と思って。
…俺は、ツマミがあればいいけど、
お前はそういうわけにはいかないだろ?』
また、彼女が、笑う。
今度の笑い声は"ウフフ"。
…表情豊かで、見てて飽きない。…
『うちは、父は頑固親父だけど、
母は良妻賢母の見本みたいな人だから。
先に"いらない"って言った時以外は、
ちゃんと私の分のご飯はあるんだよ。』
『うちとは大違いだな。』
『でもね、今日は、』
今度はクリッと目を見開いて
俺の顔を覗き込む。
…ドキッとするじゃねぇか。
『外でご飯、食べてくる、って
言ってきたんだ。
だから、帰っても、ご飯、ないの。』
…それって、
『ご飯、食べに行かない?
行きたいお店があるんだけど。
あ、もちろん、気軽なお店だよ?』
…誘い方が、上手い。
これも、"気の遣い方"なのだろうか。
俺がそういう気配りが苦手なのを
わかってて、先回りしてくれてる?
『よし、行くか!』
『やった!案内するね!
でもその前に…ケイ君、電話出して。』
わけもわからず、スマホを取り出す。
『なんだ?』
『私だけじゃなくて、ケイ君も反抗期だから。
せっかく付き合うんだから、
お互い、いい方に成長しましょう。』
『だから、なんだ?』
ニッコリと笑った彼女。
可愛い女の子の笑顔じゃねぇ。
バレーのマネージャーの時のように、
しっかり者の、凛々しい笑顔…
ちょっと、怖い(笑)