第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
『まだスカスカだよー。
他に何か洗うもの、ないの?
あ、これも洗う?』
首にかけてたタオルもとられて、
このままだと、服まで脱がされそうだ(焦)
『いいから、早く、教えてくれ!』
コインを入れて、コースを選択して、
蓋を閉めて、スイッチオン。
…ウォォォン…
低く静かな音にあわせて
洗濯が始まった。
『びっくりするほど、簡単だな…』
『でしょ?
家の洗濯機も似たようなもんだよ。
この際、お母さんに習ったら?』
『なんでだよ。せっかく実家にいるんだから。』
『そういう考えね(笑)
ケイ君、ずっと実家なんだ?』
『あぁ。』
『ほかの家事もしない?』
『する必要が、ねぇからなぁ。』
ウフフ、と笑った彼女。
『してあげたい。』
『何を?』
『洗濯とか、してあげた~い。
ケイ君、独り暮らし、すればいいのに。』
『だーからー、必要ねぇだろ?
店番が仕事だし、烏野もすぐソコだし。
わざわざ遠くに行く理由がねぇの!』
『でもさ、
独り暮らしの彼のお世話とか
私、したことないんだよねぇ。
風邪ひいた彼の看病とか、憧れる!』
俺は、独り暮らししたことは、ない。
けど、独り暮らししてる女と
つきあったことは、ある。
確かに、ちょっとした同棲みたいで楽しい。
そこに泊まって
翌日、ダラダラと過ごせるのも、
自分のものがそこに増えて
実家以外に居場所が出来るのも、
ありがたい。
ありがたいけど、
自分がそこを
"訪ねる"立場だからいいのであって、
自分がそこの"主"になろうとは
全く思わないんだよなぁ…
『俺じゃなくてさ、
綾が独り暮らしすればいいだろ?
きっと楽しいぞ~、
何時に帰っても怒られないし、
男も連れ込み放題だぞ~。』
『男、じゃなくて、ケイ君を
連れ込み放題、でしょ。』
『車で不自由な思いして
こそこそヤらなくてもいいしな。』
『そう?私、嫌いじゃなかったよ?
もう一回、って言われたら、断らない。』
『コラコラ、なんてこと言うんだ(笑)』
『そう?
ケイ君といるとなんでも楽しくて!
ほら、コインランドリーだって
あっという間に時間がたっちゃう。』
気がつくと、乾燥まで終わっている。
フカフカでホワホワの洗濯物。
…初めて触る感覚かもしれない。
優しい感じ、って言ったら
俺らしくなくて笑われるか(照)