第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
『…てなわけで、もう、ホント、
放っておいてほしいってわけだ!』
ぶつくさ言う俺に、
森島が…いや、慣れなきゃな…
綾が大笑いしながら答えた。
『ケイ君も、今、反抗期なんだね、
フフ、私と一緒じゃん!』
…ええと、読者のみんなには
よくわかんねぇ場面転換か?
今は、あの日、
…花火大会デートをした日で、
親にグチグチ言われた日…の翌日。
そして、ここは夜のコインランドリー。
綾と俺、二人で、
洗濯が終わるのを待ってる。
"自分で洗濯する!"と
シャツを母ちゃんから奪い取った手前、
自分で何とかしようと、
あの後、家族の目を盗んで
そうっと洗濯機の前に立った。
えぇと…
シャツ一枚に対して、
洗剤、どのくらい入れるんだ?
柔軟剤とか漂白剤とかは?
あれ、どのくらいかもわかんねーし、
なんか、入れ口みたいな場所も、
穴みたいなのとか引き出しみたいなのとか
いくつかある。
どれをどこに入れるんだ?
全部いっぺんにぶっかけて
スタート、じゃダメなのか?
…シャツに、なんか書いてあるかも。
シャツをまじまじと見る。
裏についてる小さなタグに
何やらいくつか並ぶマーク。
多分、洗濯のしかたの指示らしい。
…ダメだ。
酔っぱらった頭では
ますますわからない。
でも母ちゃんには、絶対聞かない。
なぜって、
『洗濯してくれる人、いないのかい?』とか
『洗濯も出来ない男に育てちまって…』とか
言われるのは間違いないから。
んで、困った俺は、綾に電話した。
『洗濯の仕方を教えてくれ。』
という情けない頼みに、綾は、
『洗濯機は家ごとに違うから
言葉じゃ説明できないなぁ。
明日、仕事の後でコインランドリー集合!』
と答えてくれて、
今、ここにいる、というわけだ。
昨日は、飯も食わせずに
セックスだけして帰らせたし、
つきあいだした翌日に
コインランドリー集合。
こんな、全然イケてない展開って、
…謝らずにいられねぇ。
『なんか、わりぃな。』
『そんなことないよ~。
なんか、生活感あって、新鮮だし、
そもそも、シャツ汚したの、私だし。
…一枚だけ洗うの、もったいないね、
あ、トランクのヤツも一回、洗えば?
あのお土産のHなトランクスとか!』
…と、とても楽しそうだ。