第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
人も車もすれ違わない田舎道…
だと今まで思っていたのは
俺の勘違いだったのか。
今、こうして
人に見られたくない姿になってみると
こんな田舎道にも結構、
信号があったり車とすれ違ったりする。
しかも、こんな田舎なのに、二車線。
信号で停まったときに、
たまーに隣の車線にトラックとか並ぶと、
こんな夜中に裸で(もちろん下半身は
ちゃんと履いてるけど、外から見たら
上半身しか見えねぇからなぁ…)
車を運転してる俺、どう見えてんだか…
さらに、エアコンの風が直接、当たる。
体がキーンと冷えてきて、
興奮してるわけでもねぇのに、
俺の、オマケみたいなちっちぇー乳首が
コロンと固くなってるのも、だっせぇ…
自分の情けない格好が気になって
彼女が話しかけてくる会話にも、
とんと身が入らない。
そんな俺の心を汲み取ったみたいに
彼女が言った。
『…やっぱ、裸は、不都合じゃない?』
『んなこと言ったって、
ねぇもんは、しょーがねーだろ…』
『ね、やっぱり、せめて、』
彼女が、
拾ったまま手にしてたバスタオルを
俺の首に巻き付けた。
マントみたいだったさっきとは、逆に。
…言いたくねぇけど、
お地蔵さんの首のヨダレかけ?みたいだ。
『これはこれでマヌケだ!』
『そうかな?
チラッと見ただけなら
柄物のランニングシャツに
見えなくもないよ?
真っ裸より、マシじゃない?』
…そりゃそうだけども。
予定外の、
想定外の
なりゆき、とはいえ、
これってとりあえず、デート、だよな。
チラッ、と、彼女の顔を盗み見る。
『…呆れてねぇか?』
『なんで?こんな楽しいデート、初めて!
やっぱり大人の余裕?
カッコつけてないところがカッコいい!』
…なぜだろう。
言葉だけ見ると誉め言葉なのに、
全然、誉められてる気がしない…
お地蔵さん状態で運転する俺に
何の違和感もないように話しかける彼女。
おかしなことに
だんだん俺もその状況に慣れて来て、
そしてかなり町に近づいた頃。
道路沿いの眩しいほどの明かりを見つけ、
彼女が声をかけた。
『あ!烏養さん、あそこで停めてくれる?
…前じゃなくて、はしっこでいいよ、
人目につきにくいところ。
…ちょっと待ってて。』