第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
突然のキスだったけど、
『…ぁ、んっ…』
彼女は拒否しなかった。
むしろ、両手を俺の背中にまわし、
応えてくれる。
…調子にのって、いいんだろうか。
このまま、先に進んでもいいんだろうか。
俺の手が動いて、二つの音をたてる。
カチャ…自分のシートベルトをはずす音。
カチャ…彼女のシートベルトをはずす音。
『…このまま、いいか?』
『ここで?』
『ここなら、誰もいねぇよ。』
『…車でしたこと、ない。』
初めて。
どんなことでも、
そいつの"初めて"に関われるのは
男として、誇らしい。
パチスロ。
タバコ。
どれもお試しでさせてきたけど。
『イヤか?』
『ドキドキ、する。』
…これって、GOサイン、だよな。
『上等だ。そのままドキドキしてろ。』
そう言いながら、手を滑らせて
ブラウスのボタンを外していく。
俺だって、ドキドキしてるさ。
威張って言ったけど、
自分もそれほど
カーセックスしたことなんて
ありゃしないんだから。
ただ、もう、
この勢いを失いたくないのと、
彼女が俺に求めている"大人の経験"を
満たしてやるには、
今、ここで。
それしかない、と思ったから、
一番下のボタンをはずし、
ブラのホックもはずして、
暗がりのなかに浮かび上がる
白い身体を見たら、
猛烈に、欲望が芽生えてきた。
こんなところで
こんなかたちで
俺のものになろうとしてる彼女を、
俺に夢中にさせたい。
初めてはいつだった?
どんな男が相手だった?
最後に抱かれたのは、いつ、どこで?
…その全部より、
俺の方がいい、と思わせたい。
ただのオッサンじゃなくて、
彼女にとって今までで一番の男に。
ブラを、むしりとる。
後部座席に放り投げる。
ナマ足から、パンティを引き抜く。
これも後部座席に放り投げる。
『エッロい格好、しやがって。
もう、逃げられねぇぞ?』
興奮、しろよ。
お前が惚れた男は、
お前がしたことないようなことを
遠慮なくやっちまうような男だ。
やらせちまうような男だ。
白い身体の向こう側に手を伸ばして
助手席のシートを倒す。
ガッ、という音と同時に
彼女の体が後ろに倒れこみ、
俺がのしかかる空間ができた。
…たっぷりと。
もう、止められない。
どこから、愛してやろうか?