第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
結局、話はウヤムヤのまま
その日の飲み会はお開きになり、
それから数日後の夕方。
嶋田から電話があった。
『繋心~、手ぇ、あいてね?
今、いつも借りてる体育館なんだけどさ、
夏休みのうちに、バレー関係のもの
倉庫整理するように言われてて。』
…罠、じゃねーだろな?
『…誰がいる?』
『大学生組と俺。』
確かにうしろでワイワイ賑やかな声。
『なーんだ、じゃ、大学生に頼めよ~。』
『最初、コイツらに頼んでたんだけど、
何捨てていいかわかんねーからって、
俺も今、呼び出されて来たんだってば。
確かに古いもんも結構あって、なんか、
俺一人で捨てていいかどうかって
決めきれねぇんだもん。頼む!』
途方にくれてる嶋田の顔が思い浮かぶ。
『…わかった。んじゃ、
6時すぎになるけど行くから。』
世間は、夏休み。
烏野のバレー部も
今日の練習は昼過ぎまでだったし、
他の部活も5時には終わってる。
少し早く店番を母ちゃんに頼んで
6時すぎに体育館に行くと、
体育館に、嶋田がいた。
なぜか、一人で。
グレた顔して。
『よぉ。…一人?』
『あいつら、みんな、帰った!』
『なんで?』
『今日、花火大会だからだとさ。』
『独身者は、デートか(笑)』
『行くな、とは言えねぇじゃん。』
『だな(笑)
ま、俺は暇だし、
お前を置いて帰ったりしねぇから、
心配すんな…滝ノ上は?』
『アイツは今の時期、
エアコンの取り付けで大忙しだ。』
『稼ぎ時ってやつだな。』
男二人で掃除にとりかかる。
『結構、いらないもの多いな。
ゴミ袋、足りっかなぁ。』
『上からギューギュー、踏めよ。
持ち手のところ、ビヨーンって
伸ばして結べば、なんとか入るだろ…』
…そんな話をしながら、
結構な量のものを処分することにして
二人でゴミ袋を外に運び出していたら、
『あれ?』
『お?』
…げ!
体育館の入り口からこっちを覗く、
…森島…
嶋田に"お前が呼んだのか!?"と
表情で文句を言うと、
マジな表情で、声を出さずに
"俺じゃねぇよ!俺じゃねぇから!"
と、リアクションだけで全力否定してくる。
この否定っぷりは、ガチらしい。
じゃ、何でだよ?
知るか!!
…俺ら二人の
あやしいやりとりに気づかない森島が
爽やかな声で言った。