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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)




俺たちのすむ町に戻ってきたのは
11時前だった。
家の近くの駅でおろしてくれ、
…と彼女は言う。

『家まで送るぞ?』

『いい。歩いてすぐだし、
歩きながら少し気持ちを整理しないと。』

『…なんの?』

『え?ぁぁ、父とケンカ中だから。
あんまり楽しそうな顔のまま帰るわけにも
いかないでしょ?
私だって怒ってるんだぞー、っていう
顔して帰んないと。』

『なんだ、それ。せっかく楽しんだのに
わざわざ不機嫌モードに切り替えなんて、
面倒くせぇなぁ。』

『娘と父親の間にはいろいろあるから。
…烏養さんみたいに、
人生を楽しめる心の余裕が
ちっともない大人なの、うちの父親は!』

『やっぱり反抗期じゃねーか。』

『うん、負ける気がしない反抗期!』

『こりゃ、親父さんも大変だ(笑)』

『ちょっと!どっちの味方?!』

口を尖らせてプリッと膨れる様子が、
子供のようで。

やがてもうそろそろ
目的の駅が見えてくる頃、

『ちょっと、そこのコンビニ寄りたい。』

彼女がそう言うから車を止めた。

『ちょっと待っててね。』

トイレでも行くのかと、車で待っていると
白い小さなビニール袋をぶら下げた彼女が
小走りで出てきた。

助手席に座ると、その小さな袋を
後ろのシートにそっと置く。

『おい、そんなとこ置いて…忘れるなよ?』

『うぅん、これ、烏養さんに。
全然、飲めなかったでしょ?
ビールとおつまみだから、
帰ってゆっくり、飲んでね。』

そんなさりげない気遣いは
マネージャー的、というか
さっきの子供っぽさとは逆に
グンと大人っぽく感じて。

駅の前に、車を止める。

『ホントに、ここでいいのか?』

『うん…今日一日、ありがとう。
ホントに楽しかった。』

『そりゃ、よかった。
早く親父さんと仲直りしろよ。』

『仲直りしたら、報告するから
また聞いてくれる?』

これは…次のデートの誘いだろうか?

『…あぁ、うん、まぁ。』

俺が中途半端に、うなずくと、
彼女は嬉しそうな笑顔。
どう受け止めていいやら。

『じゃあ、また。火曜日に。』

あさって、また?
次のデートにしちゃ早くねぇか?

『え?火曜?』

『あれ、今週、練習あるよね?』

…なんだ、そっちか。

『あ、あぁ、あさって。』

すっかりペースを乱されてるのは
どうやら俺の方らしい…

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