第3章 ~痛い、恋 ~ (烏養 繋心)
自動ドアをくぐると、
涼しくて賑やかできらびやか?!で、
まぁ、広い意味での夢の国(笑)
物珍しそうに
キョロキョロしながらついてくる彼女を
俺の台の横に座らせた。
『ほら、』
午前中に蓄えた余力を一箱、
彼女の横にどーんと置いてやる。
『これ全部、使いきってみろ。』
『…どうやるの?』
『見てろよ。』
今まで、
何千回と繰り返してきた動きを、
得意気にやってみせる俺(笑)
チャリンチャリンチャリン、
ガチャ…
パチ、、、パチ、パチッ。
ヂャリヂャリヂャリヂャリ~ン。
(よかった、出た。カッコついた 笑)
『すごーい!!』
『やってみろよ。』
見よう見まねで、
一つ一つの手順をきちんと確認しながら
パチスロを真面目に(笑)するその仕草は
俺にとってもものすごく新鮮で…
最初のうちこそ
吸い込まれる一方だったコインが
何回か後に
ジャラジャラジャラ~と出て来た時の
驚きようと喜びようといったら、
『あぁっ、烏養さん、どーしよー、
キャー、出たぁっっっ!』
そりゃもう、
お化けでも出たような騒ぎっぷりで。
俺も隣で打ちながら
基本、好きにさせて、
たまーにチラッと見て来そうなときだけ
ちょっと手を出してやったりしてたら、
すぐになくなるだろうと思ってたドル箱は
減るどころか2倍に増えていた。
『お、やるな、The ビギナーズラック!
…気がすんだならここらがやめ時だし、
まだやりたきゃ、全部無くなるまで
やってもかまわねぇけど?』
『烏養さんは?』
『俺は…』
足元に重なってるのは…5箱。
『どっちでも。森島にあわせる。』
『じゃ、楽しいうちに終わろうかな。』
『えらい!お前、やっぱり賢いな(笑)』
自分のドル箱を抱えさせて
一通りの段取りを体験させ、
いくらかの現金を手にした森島は、
会ったときとは別人のような顔をしてた。
『楽しかったぁ!』
『そーか、そりゃ、よかった。
これに味をしめて、
また来ようなんて思うなよ!
次は絶対、負けるからな。
んなもんに使う金があったら
友達とランチでも行った方が
はるかにストレス解消になるぞ。』
『…このお金、烏養さんに返す。
もともと私、1円も使ってないから。』
『いいよ、これは森島の稼ぎだ。』
『でも…』
『いいって。』