第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『…今の話、綾ちゃんにも
聞かせてあげたかったな。』
『バッカ。綾は俺なんかより
ずーっと賢い女だから、言わなくても
ちゃーんと自分でカタつけるよ。』
『…そーかな?』
『そーだよ。
綾は今から医者になんだぜ?
生きることの意味とか、
残された人のやるべきこととか、
そーいうことと毎日向き合う仕事じゃん。
辛いこともいっぱいあると思うよ。
だからこそ、俺とかオイカワとかは
すぐわかるところで、
楽しそうな顔して光っててやんねーと。
日の丸背負うとか
プロになるって、そーいうことだろ?』
…偶然、だろうか。
岩ちゃんが言ってた
"お前らは、人に夢を見せられる"
ってことと同じ事を言ってる気がする。
『…コタローちゃんってさ、
時々、すごく鋭いこと、言うよね。』
『そーか?
俺のアホな頭に浮かんだこと、
言ってるだけだけどなぁ。』
『ちっさなことでも、
おっきく考えてる、っていうか。』
『チマチマ考えんの、苦手なんだよ!
ドーンと。ドーンと大きく!!』
『そういうところ、プレーにも出るし。
ダメな時と絶好調な時の差が、
ドーンと大きいとことか。』
『…そうなんだよぉ。
だからさ、オイカワ、
早くこっち来てくんねーと。
俺のそういうとこ、
敏感に察知してくれんのは、
やーっぱオイカワが一番だからさぁ。』
『待ってな。もう、今、俺、
欲しいものっつったら、
JAPANの座以外にないから。
一緒に日本中の女の子、』
『キャーキャー、言わそうぜ!』
キラリン。
…あぁ、木兎のこの顔。
男の俺でもワクワクする。
楽しいことがありそうな。
おっきな夢を見れそうな。
『コタローちゃん、』
『なんだ?』
今、しか言えない気がした。
『一瞬だけ、真面目なこと言うけど
笑わないで聞いてくれる?』
『聞く前にそんな約束、できっか。
面白いこと言われたら、
俺、笑うの我慢できねぇもん。』
『だーめだって。我慢して!』
…笑われても、それはそれでいいけど。
『俺さ、』
男とか
女とか
恋人とか
友達とか
先生とか
生徒とか
仲間とか
家族とか
ライバルとか
くされ縁とか
苦手なヤツとか
掴めなかった恋とか
…いろいろあるけど。
そんな中で、
時々出会える、
"特別"な出会い。