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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)




『で、そっちは?』

…あ、興味ない訳じゃなかったのか(笑)

『そもそもつきあってないけど、
とりあえず、もう、会わない、よ。』

飲みかけていた味噌汁のお椀を
口から離して、木兎がこっちを見る。

あの、瞳。
獲物を見つけた梟のような、
鋭くて、逃れられない力のある、瞳。

『ガチ?俺や岩っちの手前、とりあえず、
とかいうんじゃなくて?』

『うん。コタローちゃんの言葉で目が覚めた。
俺も綾ちゃんも、"たっぷり休んだ"から。
そろそろ、目標に向かって進もう、って。』

『ふーん。』

『そんで、
コタローちゃんが綾ちゃんと
別れた時の気持ちがわかった。

…退路を断つ、っていうか、
逃げ場も言い訳もないくらいに
必死になる時も必要なんだよね。
多分、今がその時なんだと思うし、
相手の邪魔には、絶対、なりたくない。』

『…ほら、前にさぁ、』

木兎は、味噌汁を飲み干して、言った。

『オイカワ、俺に聞いたじゃん。
"今じゃないときに出会ってたら
結果は違ってたか?"って。』

『うん、聞いたね。』

『あれ、考えたんだけどさ、
逆に、今しかありえなかったと思う。』

『…別れても?』

『そうそう。
オイカワに言われた時はさぁ、
"男女の仲"としてしか考えなかったから
あんまピンとこなかったんだけど、』

皿の上のものを平らげた木兎は、
俺の皿の卵焼きにも手を伸ばして

『…これ、ちょーだい…
世の中、こーんなに人がいるんだぜ。
出会ったヤツ全部と、
一生つきあうわけじゃねぇし。
オイカワとは、
バレーで一緒に上に行く相棒として会ったし、』

…『一緒に上に行く相棒』って。
微塵の迷いもなく、真っ直ぐに。
まだ追い付いてない俺なのに。

『綾とはさ、多分、
楽しいこととか悔しいこととか越えて
次に向かう…なんだろな、うーん、
あ、階段の踊場、みたいな?…
大事な一息の時間として出会ったと思う。』

え?

『…踊り場?』

『うん。
昇りっぱなしは、しんどいじゃん。
たまに休んでさ、ペース整えたり、
行き先を確認したり、
今いるところの景色見たり、
そういう時間、必要じゃね?』

…木兎は時々、変わった言葉で
自分の気持ちを表現することがある。

今の"踊り場"の例えは、
俺にはなかなかストンと納得いった。



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