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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



なぜだろう。
これで終わりだというのに、
悲しみや未練をそれほど感じない。

…寂しさだけは、
そこはかとなく、あるのだけれど。

『綾ちゃん、1つ、聞いていい?』

『ん?』

『俺達さ、
もし出会うタイミングが違ったら
ちゃんとつきあったり、
結婚したりしてたと思う?』

『…わかんない。
でも私は、光太郎君にも及川君にも、
あの時だったからこそ
会えてよかったと思ってるよ。

輝いてる世界を見せてくれて、
目標に向かう姿勢を教えてくれて、
辛いときに支えてくれて、
…それぞれの道に進む勇気をくれて。

不合格も失恋も心の傷だけど、
…医者になりたいんだから
自分の傷くらい、治療できなくちゃね。』

『…綾ちゃん、なんか、
一人でスッキリ完結してて、ズルい(笑)』

『だって"もし"に答えはないんだから
考えてもしょうがないんだもん(笑)』

もし、今日、試合に呼ばなければ。
もし、俺が今日、不調でなければ。
もし、岩ちゃんが来ていなければ。
もし、出会いがもっと後だったら。
もし、俺が先に好きになってたら。
もし、別れたくないって言ったら。

…どれも、考えたってしょうがない。

けど。

出会って、
恋をして、
嫉妬して、

落ち込んで、
会いたくて、
抱き合って、

嬉しくて、
寂しくて、
愛しくて、

自分を見失うほど
人を好きになれて、
本当に、良かった。

いつか、必ず、探すよ。
綾ちゃんを越える人。

好きなだけでは、ダメ。
お互いを見ててもダメ。

二人で並んで、
同じ未来を見られる人を。

…どこにいるのかわからないし、
そもそも、
どこかにいるのかどうかもわからない。

もしかしたらそれは、

5年後の
俺と綾ちゃんかもしれないしね。

『…綾ちゃん…泊まってく?』

『…ううん、帰る。
これ以上甘えたら、ダメだと思う。
今が、引き際、だよね。』

…本気の決意だからこその言葉。

あぁ、この恋、終わるんだな…

『綾ちゃん、最後に1つだけ、
言ってなかったことがあるんだ。』

『ん?』

『恥ずかしくて、顔見て言えないからさ、』

最後にあと一回だけ、
抱き締めたくて。

肩を抱き寄せて、
耳元に口を寄せる。

『…あのさ、綾ちゃん、』


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