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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



抱き締めていた両腕を、ほどく。
…甘い、夢のような話は、終わり。
苦い現実と向き合う時。

『…綾ちゃん、』

『ん?』

『俺、今なら
綾ちゃんと別れたときの木兎の気持ち、
ちょっとわかるんだ。』

『…私も。
もし私の存在がほんの少しでも
及川君の目標に翳りをおとしてるなら、
私…会わないほうを選ぶ。
及川君には、目標、叶えて欲しいから。』

『俺も。
綾ちゃん応援する、とか言いながら、
結局こうやって、俺の都合で振り回して…

やっぱり、どう考えたって
綾ちゃんが今、
一番やらなきゃいけないのは
合格するための努力、だもんね。

逆にもし今、
綾ちゃんがいなくなったら、
俺、死に物狂いでバレーやるだろな。
…綾ちゃんを失ってまで欲しいもの、
JAPANのレギュラー以外に、ないから。』



そうやって言葉にしてみて、
改めてわかった。

欲しいものを全部、
どれも1度に手に出来るほど、

俺たちはもう無邪気じゃないし、
俺たちはまだ大人じゃない。



『…光太郎君が言ってた通り、
私達、歩き出す時が、来たのかな…』


"二人とも、ひと休みしたかったんだろ?"

"夢を諦めてないなら、
そろそろ本気出していいんじゃねーか?"

…さっきそう言っていた木兎の言葉。
今になって意味がわかるし、胸に響く。

まだ、
夢は諦めてないし
諦めてほしくない。
…それを口にしていいほど、努力してないから。

もし今、歩き始めたとして、
その行く先は、別々の場所。
同じ未来を夢見る前に、
それぞれ、やるべきことがある。

『ね、綾ちゃん、俺達、
"安らげる相手"だけどさ、』

『…安らぐ前に、もう一頑張りしなくちゃね。』

『…今思うと、
なんであんなにコタローちゃんに
敗北感、感じてたんだろ?
俺が本気出したら、負けるわけないのに。』

『あ、』

綾ちゃんが、嬉しそうに笑う。

『及川君のその顔、久しぶり。』

『?』

『ギラギラした顔。
まだ私が光太郎君とつきあう前に、
試合見に行ってた頃の顔。
"俺が一番"って全身から自信が溢れてる時の顔。』

『…優しくて安らげる顔じゃない?』

『全然違う。でも、かっこいい。
"星屑"じゃなくて、"スター"の顔。』


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