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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



綾ちゃんが
しばらく黙って考えている間、
誰も、口を開かなかった。

そして、
うつむいていた綾ちゃんは
顔をあげると、

ひとつ、大きな深呼吸のあと
話し始める。


今まで、
聞きたかったけど聞けなかった、
綾ちゃんの、気持ち。



『…あたし、

光太郎君のこと、今でも大好き。

キラキラ眩しくてあったかくて、
ぐいぐい引っ張ってくれる。
本当に、元気が出るし、
見ててワクワクするし、

光太郎君がいてくれたら、
何でも頑張れそうな気がする。』

綾ちゃんが、一呼吸。

ホテルの薄い壁ごし、
どこかの部屋から、笑い声が聞こえる。

それが、妙にリアリティに満ちてて、
…俺のことを笑ってるのかと思った…
今、この瞬間が現実であることを
際立たせている。

…夢なら、いいのに。

この部屋にいる誰も、
何も言わない。

そして、
言葉は、続く。

『でもね…ズルくてごめん、
私、光太郎君と別れてから
及川君のことが、本当に大事な人になった。

及川君は…安らげる。

そーっと包んでくれるから、
ダメなところもさらけ出して
そのままの自分でいられる。

及川君のそばなら
頑張らなくてもいい、
泣いてもいい、って思える。

…まったく違うタイプだから、
どっちが好き、とか言えなくて…

二人の優しさが居心地よすぎて
いつまでもダラダラ甘えてた。

だから、一番、謝らなきゃいけないのは、私。』

これが、
綾ちゃんの、
正直な、気持ち。

『…俺、やっぱり、
コタローちゃんには勝てないんだね。』

何をやっても。
やっぱり、勝てない。

『そーかな?』

そうだろ?

『俺ら、一緒じゃん。』

『…どういうこと?』

俺の問いには答えず、
木兎は綾ちゃんに言った。

『もう、そろそろいいんじゃねーの?』

『…何が?』

『二人とも、たっぷり、休んだろ?』

『…休んだ?』

木兎は、サッパリとした顔をしていた。

いつもの
すっとんきょうだったり、
とぼけてたり、
アホっぽかったり、

そんな木兎とは別人の顔。

強く、優しく、迷いのない表情。
あの、人を照らす輝きのオーラ。
その両方に満ち溢れていて、

なぜか
黙って次の言葉を待ってしまうような
圧倒的な存在感があった。


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