第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『コタローちゃん、綾ちゃん…ゴメン。』
『及川が謝る必要、ねぇだろが。』
『ある。
…親切ぶって相談にのったりしてたけど、
ホントは二人が羨ましかった。
嫉妬したことも、裏切ろうと思ったことも
何度もある。』
『だけど、オイカワ、結局、
俺達どっちものことも裏切らなかったんだからさ。
じゃ、いいじゃん!』
『コタローちゃん…』
『…友達が頭下げる姿なんて見たくねぇよ。
もし、もし万が一、本当に
謝らなきゃいけねぇことしたとしても、
…半分は、そうさせたこっちも悪い。
だから、オイカワが謝んなら、
俺も、謝んなきゃなんねーや。
オイカワがなーんでもわかってくれるから、
お前の気持ちも考えずに甘えすぎてた。
俺も、ゴメン。』
木兎…
相変わらず、分かりやすくてカッコいい…
『じゃぁさ、
ついでにこの際、ハッキリさせよーぜっ。』
…え?
ついで、とか
この際、とか
イヤな予感しかしないのは何故だ?
『…ハッキリって、なにを?』
『なぁ、綾、』
木兎の呼び掛けで、
男三人の視線が
綾ちゃんに、集まる。
『…え、あたし?なぁに?』
『お前、オイカワのこと、好きなの?』
あまりにストレートな質問に、
木兎以外の3人が、
ゴクリと唾を飲み込んだ音がした。
『…コタローちゃん、それ、今、必要な話?』
『むしろ、これより必要な話、なくね?』
…そりゃ、そうだけども…
『な、綾、俺に気ぃ使わなくていいから、
よーく考えてみろよ。』
『…綾ちゃん、俺にも遠慮しなくていいからね?』
綾ちゃんに申し訳ない。
俺に呼び出されたばっかりに、
こんなこと、本人たちの目の前で
言わされるハメになって…
ホント、木兎のこの真っ直ぐさ、というか
デリカシーのなさには驚かされるってば…
しばらく俺たち二人の顔を
交互に見ていた綾ちゃんは、
意を決したように、言った。
『本当のことを、言うね。』
うん。
…綾ちゃんの本当の気持ち。
聞きたいような、
聞きたくないような。
それはつまり、
『俺か木兎か』という選択のはずで。
どちらかが"上の組"
どちらかは"下の組"
…また、選抜される、ということ。